2015/11/30
誰かと一緒に食事をとっている高齢者に比べて、一人で食事をとる高齢者のほうがうつになりやすいという興味深い研究が発表された。
これは、谷友香子氏(東京大学大学院医学系研究科健康教育・社会学分野 特任研究員)が発表したもので、近く英国の加齢医学専門誌に掲載される予定である。
この研究は、2010年と2013年に実施したJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study;日本老年学的評価研究)調査に参加した全国24市町の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者のうち、2010年時にうつ症状がない人を対象に、孤食と3年後の2013年時のうつ症状の発症(老年期うつ病評価尺度で5点以上)との関連について性別および世帯群別に分析したものとなっている。この分析には、世帯および孤食の情報がない人、歩行・入浴・排泄に介助が必要な人を除いた男性17,612名、女性19,581名のデータを使用している。
3年間の追跡調査の結果、一人で食事をとる「孤食」の人ほど、うつ症状を発症していることがわかった。一方、誰かと一緒に食事をとる「共食」の人との比較では、同居(誰かと暮らしている)か独居(ひとり暮らし)かを考慮して検討した結果、独居男性では孤食の場合は、共食に比べて2.7倍うつを発症しやすい可能性があることがわかった。女性では、同居でも独居でも孤食であると1.4倍うつを発症しやすいという結果が出ている。高齢者のうつ予防のためにも、一人で食事をするのではなく、誰かと一緒に食事をとるような働きかけが必要であると結論づけている。
谷氏は「食事は社会的な活動の場であり、単なる栄養素の摂取だけでなく、精神的な健康を保つ上で重要な役割を担っているといわれています。子どもや青年を対象とした研究でも、食事を一緒にとることは不健康な食行動や肥満だけでなく、飲酒、喫煙、うつ、自殺念慮などに対して保護的な役割を担っている可能性も報告されています。退職、子どもの独立、配偶者の死別などにより、社会関係が大きく変化する高齢者にとって、食事の時間は人と交流するための重要な役割を担っていることが考えられます。」と解説している。
高齢者の家族や友人、近隣の人たちを巻き込んで一緒に食事をする機会を増やしたり、自治体などでコミュニティレストランを開催するなど、地域ぐるみで孤食高齢者を減らす試みが必要なようである。
Yukako Tani, Yuri Sasaki, Maho Haseda, Katsunori Kondo, Naoki Kondo. Eating alone and depression by cohabitation status among older women and men: The JAGES longitudinal survey. Age and Ageing (in press).
一緒に食事をする人がいるかどうかによるうつ症状へのなりやすさの比較(男女および世帯別)
Press Release No:061-15-06より引用
詳しくは、下記の日本老年学的評価研究Webサイトを参照
http://www.jages.net/#!/cl20
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