2015/11/30
高齢者の薬物療法では、若年者と比較して有害事象が多く発生するといわれている。「有害事象」というのは、広義の副作用のことで、薬物アレルギーなどのほか、薬効が強く出過ぎることによって起こる有害事象や、血中濃度の過上昇によってもたらされる臓器障害なども含まれる。急性期病院での高齢者の有害事象出現率は6~15%、60歳未満に比べて70歳以上では1.5~2倍の出現率といわれる。高齢者で薬物有害事象が増加する要因としては以下のようなことが考えられるとしている。
疾患上の要因 |
複数の疾患を有する→多剤併用、併科受診 慢性疾患が多い→長期服用 症候が非定型的→誤診に基づく誤投薬、対症療法による多剤併用 |
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機能上の要因 |
臓器予備能の低下(薬物動態の加齢変化)→過量投与 認知機能、視力・聴力の低下→アドヒアランス低下、誤服用、症状発現の遅れ |
社会的要因 |
過少医療→投薬中断 |
高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 Ⅱ高齢者薬物療法の注意点 1薬物有害事象の回避 表1引用
日本老年医学会では、2005年に「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を作成しているが、日本医療研究開発機構研究費・高齢者の薬物治療の安全性に関する研究 研究班と共同でガイドラインの改訂に取り組み、この度完成となった(ガイドラン作成グループ代表・ 秋下雅弘/東京大学大学院医学系研究科加齢医学)。現在、総論部分を公表しているが、領域毎の指針を含むガイドライン全体は冊子として12月発行予定である(発売:メジカルビュー社)。
作成に当たっては、ガイドライン(案)のパブリックコメントを募集したところ、全158件(学会8件、研究会・団体2件、医師85件、薬剤師6件、薬学部・薬理学教員3件、看護師1件、介護職8件、製薬会社7件、登録販売者1件、一般37件)の意見が寄せられた。
本ガイドラインの特徴としては、「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」「開始を考慮するべき薬物のリスト」を作成したことが挙げられるだろう。前回のガイドラインでは「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物のリスト」だけであったが、今回はそれを改訂した上で新たに「開始を考慮するべき薬物のリスト」を作成した。
特に慎重な投与を要する薬物のリスト
このリストの目的の1番目は「薬物有害事象の回避」、2番目は「服薬数の減少に伴うアドヒアランスの改善」である。リストに挙げられた薬物は、高齢者で重篤な有害事象が出やすい、あるいは有害事象の頻度が高い薬物である。
対象は、高齢者でも特に薬物有害事象のハイリスク群である75歳以上の高齢者および75歳未満でもフレイルあるいは要介護状態の高齢者とした。
抗精神病薬、睡眠薬、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、ステロイド、抗血栓薬、ジギタリス、利尿薬、β遮断薬、α遮断薬、制吐薬、緩下薬などを具体的に挙げている。
開始を考慮するべき薬物のリスト
このリストの目的は、「高齢者に対する過少医療の回避」である。高齢者でも有用性が高いと判断されるにもかかわらず、医療現場で使用が少ない傾向にあると判断された薬物を選定している。
対象は高齢者全般であるが、各薬物の推奨される使用法に記載された病態と注意事項を参考にして個々に適応を検討した。
抗パーキンソン病薬、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、スタチン、前立腺肥大症治療薬、関節リウマチ治療薬、が挙げられている。
詳しくは、下記の日本老年医学会Webサイト参照
http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/20150401_01.html
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