2015/12/24
2016年度診療報酬改定に向けて中央社会保健医療協議会の議論が深まっているが、厚生労働省は2015年11月25日の中央社会保険医療協議会総会で、身体疾患の治療のために入院している認知症患者に対して、病棟における対応力とケアの質の向上を図るための評価を設定することを示した。これは、病棟における認知症症状の悪化予防を図り、早期からの退院支援などに取り組むために多職種のチームが回診や院内研修を通じて支援することなどを評価しようというもの。
厚生労働省の資料によると、現在一般病棟7対1及び10対1※においては、認知症を有する患者は2割程度、療養病棟においては6割以上入院しているとされる。一般病棟(7対1~15対1)に入院している患者はどのような身体疾患で入院しているかを示したのが図1である。認知症を有する患者は、脳梗塞、肺炎、骨折・外傷、心不全、尿路感染症、片麻痺など、さまざまな疾患で入院していることがわかる。
図1 一般病棟(7対1~15対1)に入院する患者全体における疾患と認知症を有する患者の疾患(複数回答)
認知症患者の症状は、認知機能障害や注意障害、記憶障害などの「認知症状(中核症状)」と、以前は「周辺症状」と言われた「行動・心理症状(BPSD)」に分けられる。「行動症状」は、暴言・暴力などの攻撃性、喚声、不穏、焦燥、徘徊などの症状で、「心理症状」は、不安、抑うつ、幻覚、誤認などである。
入院患者に出現するBPSDで頻繁に見られるのは、「興奮」「繰り返し尋ねる」などであった。看護負担度の大きいBPSDは、「ライン類の自己抜去」「つじつまの合わない言動」「落ち着きのない行動」「転倒転落につながる危険性のある行動」「失禁」などであった。
こうしたBPSDに対する看護職員の対応としては、「特段の策は講じていない」ことが多く、講じた策としては、「見守り・付添」「最小限の身体拘束」が多かった(図2)。
図2 BPSD(行動・心理症状)が出現した患者に講じた対策(一般病棟7対1)
急性期病院における認知症の治療・ケアの課題としては、「認知症と気づかれていないこと」「せん妄の合併」「院内の連携の悪さ」「認知症患者の身体アセスメントの問題(栄養管理、疼痛管理)」などが挙げられている(「認知症の精神科入院医療と在宅支援のあり方に関する研究会」平成25年度第2回資料より)。
厚生労働省のこうした論点に対して、中央社会保険医療協議会の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「多職種で行った場合に評価をすることは良いが、ストラクチャーではなくアウトカムについて加算を付けるべきである。」と指摘した。
詳しくは、下記厚生労働省Webサイトを参照
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000105049.pdf
※「7対1」「10対1」とは
看護職員(看護師・准看護師)1人に対する入院患者数のことを指す。「7対1」では、看護職員1人あたり7人の患者さんを受け持つことになり、「10対1」では、看護職員1人あたり10人の患者さんを受け持つことになる。看護師1人あたりの受け持ち患者数が少ないほど手厚い看護が受けられることになるため診療報酬上も厚くなる。しかし、これはあくまでも「1日を平均して」の看護師数であるため、常に患者さん◯人に対して看護師1名の配置になっているということではなく、時間帯によって異なることに注意する必要がある。
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