2016/02/10
あの未曾有の被害をもたらした東日本大震災から5年目を迎える。津波被害にあった沿岸部では、住宅の造成などは徐々に進み、地元産業の復興も形が見え始めてはいる。しかし、継続した雇用の確保は難しく、安定した生活が保障されるまではほど遠い。いまだに処理が続いている福島第一原発の問題や取り残された避難区域の問題などを考えると、取り組むべき課題は多い。
何より被災地の住民の心身両面にわたる健康状態では、気がかりなことが多い。東北大学の東北メディカル・メガバンク機構・宝沢篤教授によって、住民の健康実態調査がまとめられた。2014年度の健康調査結果によると、昨年より健康状態が改善した人は増えてはいるものの、抑うつ状態などの精神神経疾患の症状を示す人が多いことがわかった。
この調査は、成人男性1万7000人にアンケートを実施し、その調査結果と2013年に行った約7500人への調査結果を比較したものだ。
「気分がふさぎこむ」などの抑うつ症状を訴える人は、沿岸部26.0%、内陸部24.4%であった。2013年度の沿岸部30.0%、内陸部25.5%と比べると改善はしているものの、明らかに沿岸部のほうが抑うつ症状を訴える人が多い。
「震災を思い出すと仕事が手につかなくなる」などの症状を訴える“心的外傷後ストレス障害(PTSD)”の人は、沿岸部3.0%、内陸部2.4%であった。2013年度の沿岸部5.0%、内陸部2.4%と比較すると改善傾向にはあるが、まだ多くの方々が精神的苦痛から解放されていないことがわかる。いずれも沿岸部の方々の精神的ダメージが大きいことから、津波の影響は否定できないだろう。
あれから5年、悲惨な災害の体験を風化させず、被災地の方々の“こころ”に寄り添う援助が必要とされている。
図1 2011年3月、津波被害のあった沿岸部の光景
(写真提供:『エキスパートナース』2011年5月号)
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