2016/06/17
日本臨床救急医学会は、本人が蘇生を望まない場合に、救急隊が蘇生を中止するための基準づくりを実施している。現在、本人が心肺蘇生を希望しなくても、本人以外の119番通報によって救急隊が心肺停止事例に出動した場合、救急隊員は医療機関に搬送するまで心肺蘇生を実施している。これは、本人が心肺蘇生を希望しない状況でも、救急隊が適切に心肺蘇生を中止するための手順が明らかでないことが背景にある。
2013年度厚生労働科学研究「救急医療体制の推進に関する研究」では、全国の救急隊員295人にアンケート調査を実施した。救急隊員の17%が、書面で心肺蘇生を希望しない意思を傷病者本人が示している心肺停止事例を経験しているが、25%が心肺蘇生を中止し、70%が継続した。また、47%の隊員が、書面以外の方法で心肺蘇生を希望しない意思を示した事例を経験していた。このような場面における活動基準が定められていない地域の救急隊員のうち、90%が活動基準の策定を希望していた。
実際には、すでに独自の基準を定めている地域がある。岐阜県では、「救急隊(消防隊)活動プロトコール」を策定している。「心肺蘇生プロトコール運用について注意する点」で、「CPRを行いながら、蘇生術の施行がふさわしくない状況が判明した場合(悪性腫瘍末期や蘇生を受けない旨の意思表示がされているなど)にはCPRに並行して主治医と連絡を取るように努め、主治医から『CPRを行わない』旨の指示(DNAR)が取得されたならばCPRを中止する」としている。
一方、2014年の「人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」では、一般国民の「意思表示の書面」に関する考えを明らかにしている。「あなたは、自分で判断できなくなった場合に備えて、どのような治療を受けたいか、あるいは受けたくないかなどを記載した書面をあらかじめ作成しておくことについてどう思いますか」という質問に対し、一般国民1,518人の69.7%が「賛成」と回答。「賛成」と回答した人のうち、そのような書面について「どのように扱われるのが良いと思いますか」という質問に対して、「書面に従って治療してほしい」と答えたのが25.6%、「書面に記載した希望を尊重しつつ、家族等や医師又は医療・ケアチームの判断も取り入れながら、治療してほしい」が65.3%だった。
図1 意思表示の書面の取り扱いについての希望
詳しくは、下記の各Webサイト参照
・岐阜県公式ホームページ「岐阜県 救急隊(消防隊)活動プロトコール」
http://www1.gifu-u.ac.jp/~qqa/pdf/kenkyu/protocol-h22_1126.pdf
・厚生労働省 「人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/zaitaku/dl/h260425-02.pdf
■上記ニュースに関連したディアケアコンテンツをご覧いただけます。
×close
×close
©DEARCARE Co., Ltd.