2016/08/16
公益社団法人全日本病院協会は、「身体拘束ゼロの実践に伴う課題に関する調査研究事業報告書」を公表した。それによると、65.9%の病棟・介護施設等で身体拘束ゼロを達成できていないことがわかった。これは、全国の712の病院や介護保険施設、特定施設およびサービス付き高齢者向け住宅にアンケート調査を実施し、「身体拘束ゼロの達成状況」、「拘束行為ごとの実施状況と許容意識」などを調べたものだ。
身体拘束に関しては、介護保険制度では当初より「介護保険指定基準」で禁止を規定。その後、身体拘束ゼロ作戦推進会議が2001年に「身体拘束ゼロへの手引き」を作成し、介護施設等で身体拘束が認められる3要件と身体拘束にあたる11行為を示した。しかし、3要件を満たす状態を具体的に定義することは容易でなく、医療・介護の現場は事故や紛争リスク回避のために難しい判断を迫られている。
報告書では、「身体拘束ゼロの達成状況」について、手引きに記載の身体拘束11行為をいずれも行わない状態を「身体拘束ゼロ」と定義。医療保険適用病床、介護療養型医療施設、介護老人保健施設、介護老人福祉施設、特定施設(有料老人ホーム)、サービス付き高齢者向け住宅のそれぞれで、身体拘束11行為を「行うことがある」と回答した病棟・施設の割合を明らかにした。
病棟・施設種類ごとにみると、「行うことがある」と回答した病棟・施設の割合が最も多かったのは「地域包括ケア病棟等」で98.6%。次いで、「一般病棟(13:1/15:1入院基本料)」で94.7%、「障害者施設等」93.5%、最も少なかったのは「サービス付高齢者向け住宅」で24.7%となっている。「特定施設(有料老人ホーム)」は32.5%、「介護老人福祉施設」は33.3%であった。
身体拘束ゼロを達成できていない病棟・介護施設等の割合は医療保険適用病床が大きく、介護施設で小さい。介護療養型医療施設は中間的な位置だった。また、医療保険適用病床について、医療療養病棟は91.8%、一般病棟(7:1/10:1入院基本料)は93.1%と、拘束の実施率に大きな差は見られなかった。
これについて、全日本病院協会は「医療保険適用病床と介護療養型医療施設との差に着目すれば、医療保険適用病床では、より組織的で積極的な身体拘束の低減に向けた取組を行うことで、身体拘束を減らせる余地があるものと考えられる」と述べている。
さらに、調査では「拘束行為ごとの実施状況と許容意識」について、身体拘束11行為、及び、「ベッドの三方を柵や壁で囲む」「自分の意思で出ることのできない病棟・フロアに滞在させる」「鈴などの音の出る装置を体に装着」など動静把握等6行為に関し、「実施することがある」「調査日時点で当該行為を受けている患者・入所者割合」「理由を問わず避けるべき」について回答を求めた。
「実施することがある」と回答した病棟・施設の割合が最も大きかったのは「ベッド周囲に離床検知のマットセンサー・赤外線センサー等を設置」で68.3%。次いで、「手指の機能を制限するミトン型の手袋等」53.8%、「ベッドの三方を柵や壁で囲む」46.2%だった。一方、「理由を問わず避けるべき」と回答した病棟・施設割合で最も大きかったのは「自分の意思で開けることのできない居室等に隔離」で84.3%。次いで、「他人への迷惑行為を防ぐためベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る」77.4%、「徘徊しないよう車椅子・椅子・ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る」70.2%だった。(表1)
表1 身体拘束11行為・動静把握等6行為の実施状況と当該行為の許容意識
「自分の意思で出ることのできない病棟・フロアに滞在させる」や「テレビ監視モニタ」は、「理由を問わず避けるべき」との認識を持つ病棟・施設の割合が大きく、実際に行っている病棟・施設の割合は小さかった。これについて、全日本病院協会は「患者・入所者を監視する行為は、四肢固定や隔離を伴わない身体拘束以上に医療・介護現場での拒否感が強いものと考えられる」と説明している。
詳しくは、下記の公益社団法人全日本病院協会Webサイト参照
http://www.ajha.or.jp/voice/pdf/other/160408_2.pdf
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