2016/12/8
マイコプラズマ肺炎は従来、4 年周期でオリンピックのある年に流行を繰り返してきたため「オリンピック肺炎」と呼ばれていたが、近年この周期は崩れ、1984年、1988年に大流行した。2011年、2012年にも大流行し、リオ五輪があった今年は4年ぶりの大流行となった。国立感染症研究所発表の感染症発生動向調査によると、2016年10月24~30日(第43週)におけるマイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は1.46で、大流行した2011~2012シーズンの同週の報告数を上回っている。
マイコプラズマ肺炎は子どもに多く、乾いた咳と発熱が特徴で、解熱後も数週間にわたって咳が続く。マイコプラズマ肺炎の病原体である肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)は生物学的には細菌に分類されるが、細胞壁を持たない。そのため、ペニシリンやセフェム系をはじめ細胞壁合成を阻害する抗菌薬には感受性がない。感染経路は飛沫感染と接触感染で、くしゃみや咳のしぶきを介して感染することが多い。潜伏期間2~3週を経て、発熱・全身倦怠感・頭痛などの症状を訴えるという。14歳未満が患者の約8割を占める。合併症は非常に多彩で、中耳炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群などさまざまだ。そのため、重症化が懸念され、注意が必要な疾患だという。治療指針としては、日本小児科学会が『小児肺炎マイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方』(https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/saisin_130219_2.pdf)を、日本マイコプラズマ学会が『肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針』(http://square.umin.ac.jp/jsm/shisin.pdf)を公表している。
11月8日に速報された10月24日から1週間の患者報告数は691人で、1医療機関あたり1.46人。都道府県別では、群馬が最多で、岐阜、青森、埼玉、大阪、愛知、静岡、山口などが続いた。今年に入ってからの報告総数は1万4953人に上り、すでに昨年1年間の1万323人を大幅に上回っている。今後、注意が必要となるが、特異的な予防方法はなく、流行期には手洗い、うがいなどの一般的な予防方法の励行と、患者との濃厚な接触を避けることとされている。
詳しくは、下記の国立感染研究所感染症疫学センターWebサイト参照
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