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2016/12/14

ARDS(急性呼吸窮迫症候群)患者には、うつ伏せ体位が有効

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、重症の呼吸不全をきたす疾患である。肺を損傷するさまざま要因、特に敗血症や肺炎が原因となって急性呼吸窮迫症候群が起こる。ARDSでは肺の血管透過性が亢進して血液中の成分が肺胞腔内に移動して肺水腫を起こし、非常にインテンシブな状態になる。

日本呼吸器学会、日本集中治療医学会、日本呼吸療法医学会の3学会による「ARDS診療ガイドライン2016」では、「成人ARDS患者(特に中等症・重症例)において、腹臥位管理を施行することを提案する」として、エビデンスのある治療として初めて、患者をうつ伏せにする腹臥位管理が推奨されている。

ARDSは死亡率40~50%と非常に重篤な疾患である。有効とされている治療法が「肺保護戦略」だけであった海外では、2013年に腹臥位管理で重症ARDS患者の死亡率が半減するという研究結果が報告され注目されていた。この研究は、重症ARDS患者に対して肺保護戦略に加えて、1日16時間以上の腹臥位管理を4日間程度行った群と行わなかった群を比較したもので、28日死亡率は16.0%、32.8%、90日死亡率は23.6%、41.0%と、どちらも腹臥位管理を行った群の死亡率が有意に低下したというものだ。

今回公表された「ARDS診療ガイドライン」では、8つのランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスで「腹臥位管理は成人ARDS患者の死亡を有意に減少」と明記している。適応は、中等症・重症例のARDSで背側肺病変があるケースという。仰臥位では腹圧によって背側肺底部は拡張しづらくはなるが、重力の影響で血流が集まるため酸素化障害を起こしやすい。また、背側肺底部は心臓や肺そのものの重さによって無気肺を生じやすいなど、さまざまな要因によりARDSでは背側肺病変が多い。一方、前胸部は荷重がかからないため空気は入りやすいが、人工呼吸管理下では前胸部の健常肺ばかりに強い圧がかかって過膨張となり、健常肺の障害が生じてしまう。そこで腹臥位にすることによって、背側肺底部の肺胞の拡張、換気血流比の改善、体位ドレナージ効果などによる病態の改善効果が期待できるという。

CQ7 成人ARDS患者において、腹臥位管理を行うべきか

推奨
成人ARDS患者(特に中等症・重症例)において、腹臥位管理を施行することを提案する
(GRADE 2C 推奨の強さ 「弱い推奨」/エビデンスの確信性 「低」)

「ARDS診療ガイドライン2016」(日本呼吸器学会、日本集中治療医学会、日本呼吸療法医学会)

ガイドラインでは「付帯事項」として、「実施には複数名の熟練したスタッフが必要である。十分なスタッフが確保できる時間帯のみの短時間の腹臥位管理では、十分な効果が得られない可能性があり、実施に際しては自施設の実情を確認する必要がある」としており、「実施可能な施設が増えるように、マンパワーの確保やスタッフの教育など、実施に向けた体制を整えていくことが重要」と結論づけている。

詳しくは、下記の一般社団法人日本呼吸器学会Webサイト参照

  • ※この記事内容は公開当時の情報です。ご留意ください。

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