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2017/01/19

認知症の人の事故に対する損害賠償は公的には難しいことに

認知症者は、認知機能障害のために社会的な問題を引き起こすことがありうる。認知症で徘徊中に列車にはねられて死亡したケースでは、JRが遺族に損害賠償を求めた。この訴訟では、最高裁判決でJR側の請求棄却の判決を出された。こうしたことも含めて、社会として認知症に向き合っていくために、平成27年には関係12省庁で認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)が策定された。新オレンジプランでは、「社会として認知症に向き合っていく」という姿勢が示された。具体的には、認知症の人による事故等の実態把握を行い、さまざまな議論を繰り返して、認知症者や高齢者にやさしい地域づくりを目指す方向だ。

この流れを受けて、国では認知症の人びとを含めた高齢者を地域で支えるための取組みにおいて、関係省庁で連携して推進するために「認知症高齢者等にやさしい地域づくりに係る関係省庁連絡会議」を持ち、省庁の壁を超えて取り組んできたが、その大きな方向性は、「①認知症高齢者を地域で支える方策」、「②生活支援の充実」、「③高齢者の社会参加」である。

2016年5月には、同連絡会議の下に課室長級のワーキンググループを開催し、「①認知症高齢者等による事故等の実態把握等の推進」、「② ①に関連する認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けた取組の推進」に向けた討議を行ってきた。そして今回、認知症の人が起こした事故の損害賠償に関する対応について考え方を示した。損害賠償については民間保険の紹介・普及を進めることで対応するとし、関係団体などが求めていた公的な救済制度の導入は難しいという結論となった。

同ワーキンググループによると、2014年度中に認知症の人がかかわった鉄道事故は29件。このうち損害額が最も大きかったケースでは約120万円であった。2015年に認知症の人が交通事故を起こし免許取り消しとなった件数は78件。このうち人身事故は27件、物損事故は51件だった。こうした状況を踏まえ、ワーキンググループでは事故などに伴う損害賠償への対応について検討してきたが、公的な救済制度については、モラルハザードへの対応も含めた幅広い議論が必要であり、損害が高額になる事故やトラブルが頻発しているという事実は確認されなかったことから、直ちに対応するのは難しいとなった。一方で、民間保険でさまざまな商品が開発されていることに触れ、特に個人の賠償責任を補償する民間保険については「市町村や『認知症の人と家族の会』等の関係団体と連携しつつ、必要に応じて紹介・普及等を行う」とした。

また、事故などを未然に防ぐための取り組みとして、「都道府県単位での広域見守りを強化すること」、「踏切に取り残された高齢者らを救出できるよう検知能力の高い装置や非常押しボタンの配備を進めること」、そして「運転免許センターに医療系専門職員を配置して運転適性相談に当たらせること」を決めた。認知症者のこうした社会的な問題に対する救済措置は、今後、公的に整備されることが必須になってくると思われる。国の本格的な踏み込みが期待される。

詳しくは、下記の厚生労働省Webサイト参照

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