2017/02/16
国をあげて認知症への取り組みが進んでいる。新オレンジプランの目標である、認知症高齢者が地域で安心して療養生活を送るためには、急性期病院で認知症を見落とさないようにして身体機能を維持しながら、地域の医療・介護体制につなげる必要がある。
従来、認知症患者は療養型病棟や老人保健福祉施設等に多いとされていたが、国民の約7人に1人が認知症とされる現在では、急性期を主体とする一般病院にも認知症患者は急速に増えてきている。日本老年看護学会の調査によると、1人の看護師が日勤に受け持つ患者が7~8人とすると、そのうち2人は認知症または認知機能低下のある患者で、そのうち1人はBPSD(行動・心理症状)を伴っているという1。
さらに、こうした急性期病院で働く看護師は、これまで認知症患者と接する機会も少なく、認知症看護の体系的な教育を受けていないために、認知症患者に接して戸惑うことが多いという。BPSDは認知症に関する専門的な知識やケア不足からも生じることもあって、予防や対応が遅れるとBPSDが悪化することもある。そこで、日本老年看護学会では、急性期病院における認知症高齢者の看護の質向上のために、「急性期病院において認知症高齢者を擁護する」という立場表明を行った。この声明における“急性期病院”とは「一般病院、特定機能病院等」であり、“認知症高齢者”とは「認知症の診断の有無によらず、加齢や疾病等によって、日常生活の遂行に何らかの支障をきたすほどの認知機能の低下を示しつつも、潜在する力を有し、主体的に自分の人生を生きようとしている高齢者であり、コミュニケーション障害によりうまく表現できないとしても、自らの意思を有している人」とされている。
認知症高齢者は自分の意思を持ちながらもコミュニケーション不足によって意思伝達ができず、適切なケアがされていないことから、何もできない人、わからない人とステレオタイプ化されてきた実態を再確認し、非言語的コミュニケーションの活用などのさまざまな意思確認の方法によって本人の意思を最後まで確認することが老年看護の特性である。そうした専門性を踏まえて、急性期病院における認知症高齢者の看護が取り組むべき課題に関して以下の8つの立場を表明している。
「急性期病院において認知症高齢者を擁護する」日本老年看護学会の立場表明2016
同学会では、この提言の具現化に向けて看護職者に働きかけるとともに、多職種との連携協働、介護家族や一般市民と手を携えることにより、急性期病院全体への波及を目指すとしている。2016年の診療報酬で「認知症ケア加算」収載をバックアップした同学会が出したこの立場表明は、これからの高齢者看護の一つの方向性として示唆に富んでいる。
引用文献
詳しくは、下記の日本老年看護学会Webサイト参照
http://184.73.219.23/rounenkango/news/news160823.htm
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