2017/02/23
世界的に増えていると言われるうっ血性心不全患者だが、急性増悪の原因となる摂食嚥下障害並存の予測因子が明らかにされたという論文が発表された。予測因子は、認知機能障害と低栄養状態。これらの検査を入院時に行うことで摂食嚥下障害を早期に発見し、介入することができるとされている。発表したのは、東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野の横田純一(大学院生)、小川佳子(元助教)、上月正博(教授)らのグループだ。
うっ血性心不全は、心臓のポンプ機能低下により、肺や下半身に体液が貯留してしまい、肺水腫などを引き起こす疾患で、肺水腫になると呼吸困難を生じ、夜間発作性呼吸困難や起座呼吸などの特徴的な症状を伴う。その他、心臓のポンプ機能の低下により組織での代謝が阻害されて運動耐性が低下し、全身倦怠や息切れを起こしやすい。冠動脈循環不全による頻脈や不整脈などの症状のほか、脳への血流減少によりめまいや失見当識などの神経症状が出ることもある。基礎疾患としては、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、リウマチ熱既往歴などに起因する心臓弁膜症、心筋症などが挙げられる。
この研究は、うっ血性心不全急性増悪の診断で入院した患者を対象にして、心臓超音波検査、心電図検査、血液・生化学検査、認知機能、運動耐容能、発声機能、日常生活自立度、栄養状態などの評価を行ったもの。その結果、摂食嚥下障害は38.6%に認められ、その並存にかかわる因子として認知機能障害と低栄養状態であることが明らかになったとされている。
東北大学プレスリリース「うっ血性心不全患者で摂食嚥下障害併存を予測する -認知機能と栄養状態検査で摂食嚥下障害の早期発見へ-」を元に作図
うっ血性心不全患者が摂食嚥下障害を生じると、誤嚥性肺炎の原因となり病態の悪化を招く可能性があるなど、生命予後に重大な影響を与えるため、摂食嚥下障害を早期に発見することは重要である。今回の研究によって明らかになったように、認知機能障害や低栄養状態を評価して摂食嚥下障害を早期に予測できることは、うっ血性心不全患者の予後改善に大きく寄与することになりそうだ。
詳しくは、下記の東北大学Webサイト参照
プレスリリース「うっ血性心不全患者で摂食嚥下障害併存を予測する -認知機能と栄養状態検査で摂食嚥下障害の早期発見へ-」
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2016/12/press20161214-01.html
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