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2017/03/30

脳梗塞の新しい治療法「血管内治療」普及のための方策を学会が宣言

脳梗塞の治療法である「t-PA」療法は11年前に誕生し、そのおかげで社会復帰した患者は増えている。t-PA療法は、血栓を溶かして脳血流を脳の神経細胞に再度行きわたらせる治療法である。その成果は著しいものがあるが、発症から4時間半以内に投与する必要がある。そこで、新しい治療法として期待されている「血管内治療」が注目を集めている。 この治療法は、鼠径部の動脈からカテーテル挿入して脳血管まで送り込み、カテーテルの先端に付けたデバイスで血管に詰まっている血栓を取り除いて血流を再開させる治療法である。ステントを細く折り畳んだ状態でカテーテルを血栓が詰まっている部分まで挿入し、ステントを広げて血流を確保しながら血栓をからめとり、一緒に血栓を抜き取る治療法や、カテーテルを血栓が詰まった部分まで送り込み、血栓を吸引する治療法がある。血管内治療は発症から4時間半を過ぎた場合でも、8時間以内であれば行うことができる。

このように、効果的な治療法である「血管内治療」ではあるが、わが国での実施件数が伸び悩んでいる現状がある。そこで日本脳神経血管内治療学会では、本治療の普及に関する学会宣言を行った。昨年開催された学会では、兵庫医科大学脳神経外科・吉村紳一教授によって発表が行われた。

脳梗塞による死亡数は年間6万6,058人(2014年)。同学会の調査によると、t-PA療法の実施が約1万例に上るのに対し、血管内治療は6,000~7,000例にとどまるという。この治療によって社会復帰できる患者の割合は14%、自宅復帰率は20%、それぞれ高まるという報告がある。わが国で保険適用されたのは2010年からだが、対応できる医療機関が偏在しているため、治療成績が上がらない実態がある。同学会では、①治療ができないエリアの調査と公表、②有効性の啓発、③実践の支援の3点を重点として掲げ、医療機関と自治体の連携の強化に乗り出すことになった。

同学会では、全国150施設に当治療への対応状況を調査した。その結果、47都道府県のうち全県をカバーできているのは鳥取県と石川県のみ。しかも、これらの県でも治療できる施設は多くない。専門医と病院の医師らが連携して治療が必要な患者をスムーズに施設に搬送できる体制ができているという。他の45都道府県では患者の搬送が間に合わず、治療を受けられない可能性が高い。専門医が比較的多い東京都でも、23区に集中しており、西部には不在という状況だ。

血管内治療においては、カテーテルの細かい操作など高度な技術が必要なため、実施できるのは、日本脳神経血管内治療学会が認定する脳血管内治療専門医や、専門医試験の受験資格相当の経験を有する医師に限られる。同学会の専門医は全国に1,134人にとどまる。 日本脳神経血管内治療学会専門医の都道府県別の数と配置は、下記の同学会ホームページで公開されている。

詳しくは、下記の日本脳神経血管内治療学会Webサイト参照

学会宣言の動画は、第32回日本脳神経血管内治療学会学術総会Webサイト参照

  • ※この記事内容は公開当時の情報です。ご留意ください。

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