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2017/05/25

わが国初の『便失禁診療ガイドライン』が刊行

日本大腸肛門病学会は、わが国で初めての『便失禁診療ガイドライン』を発行した。これまで便失禁患者は「恥ずかしい」という思いが強く、自分からその症状を訴えることが少なかった。しかし、多くの便失禁は、排便習慣や日常生活指導によってコントロール可能であること、さらに有効な薬物療法などがあることから、プライマリケア医の積極的な診療参加が必要であるとして同学会でのガイドライン作成となった。

わが国における65歳以上の便失禁の有症率は、男性8.7%、女性6.6%とされている。おおまかに計算すると、わが国の便失禁の潜在患者数はおよそ500万人程度になるという。便失禁に関してわが国で定まった定義はない。国際失禁会議(International Consultation on Incontinence: ICI)は「肛門失禁」と「便失禁」を分けて定義しており、「便失禁」は「社会的または衛生的な問題となる液状便または固形便の不随意なもれ」と定義している。

「便失禁」の分類としては、気がつかないうちに便が漏れている「漏出性便失禁」、便意は感じるけれどトイレまで我慢できずに便が漏れてしまう「切迫性便失禁」、そして両者が混在する「混合性便失禁」に大別される。内肛門括約筋の機能が落ちると「漏出性便失禁」が、外肛門括約筋の機能が落ちると「切迫性便失禁」が生じやすいとされる。内肛門括約筋は高齢者になって加齢により収縮力が弱まることが多く、外肛門括約筋は分娩や直腸がんの手術などによって傷害されることが多い。

「便失禁」の外科的治療法としては、肛門括約筋形成術、仙骨神経刺激療法などのほか、順行性洗腸法、有茎薄筋移植術、ストーマ造設術などがあるが、保険収載された仙骨神経刺激療法を除くと外科治療のエビデンスレベルは低いとされる。そのため、まずは保存的療法を施行することが望ましい。保存的療法としては、食事・生活・排便習慣指導、薬物療法、骨盤底筋訓練、バイオフィードバック療法、アナルプラグ、逆行性洗腸法(灌注排便法)などがある。目的は、便性の固形化、外肛門括約筋を含めた骨盤底筋の収縮力増強、直腸感覚の正常化、直腸や結腸の定期的空虚化などである。

日本創傷・オストミー・失禁管理学会編集『排泄ケアガイドブック』とともに、臨床現場で役立てたい一冊だ。

書名:『便失禁診療ガイドライン 2017年度版』

編集:日本大腸肛門病学会

定価:本体2,500円+税

発行:南江堂

  • ※この記事内容は公開当時の情報です。ご留意ください。

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