2017/10/11
高齢者施設で亡くなる患者の多くが「肺炎」と言われている。日本人の死因の第3位である肺炎は、1972年に比べると約4.4倍になっている。肺炎で死亡する人の9割以上が75歳以上の高齢者で、中でも「誤嚥性肺炎」が多い。高齢者肺炎の8割以上が誤嚥性肺炎というデータもあるほどだ1。
誤嚥性肺炎は高齢化に伴う嚥下機能等の低下が原因で起こることが多いため、高齢者は発症するリスクが高い。しかし、誤嚥性肺炎を予防したり効果的なケアを提供することで入院患者の予後に大きく貢献できるので、「決してあきらめないで!」と言うのは、愛知医科大学病院緩和ケアセンター講師の前田圭介医師だ。看護専門雑誌『エキスパートナース』2017年10月号の特集から紹介しよう。
院内肺炎の中で特に急性期で問題になるのはVAP(人工呼吸器関連肺炎:Ventilator Associated Pneumonia)である。人工呼吸管理中の患者の気管挿管チューブやカフに沿って細菌が気管に侵入することによって起こるもので、VAP発症予防のために、口腔保清などいくつかのバンドルが示されている。VAP以外の院内肺炎では、加齢などの要因によって発生する誤嚥性肺炎である。誤嚥性肺炎予防のためには、口腔保清と口腔機能維持を兼ね備えた口腔ケア、早期離床、早期嚥下機能評価、標準予防策を含む多面的ケアが必要とされている2。
前田医師が強調するのは、誤嚥性肺炎の発症リスクは摂食嚥下障害だけではないという点だ。つまり「誤嚥のリスク」と「誤嚥性肺炎発症のリスク」を混同しないで、と言う。誤嚥性肺炎は、基本的には、口腔・咽頭粘膜中の細菌によって引き起こされるものだ。誤嚥した食物が原因で起こるわけではなく、食物と一緒に気道に入った細菌によって引き起こされるもので、誤嚥性肺炎発症のリスクを減らすためには、細菌の量を減らしたり細菌の質を改善すればいいということになる。さらに、誤嚥性肺炎を防ぐためには誤嚥したものを喀出する力や局所の免疫機能が重要だとも指摘する。高齢者の低栄養は防御機能の低下に関連するため、適切な栄養ケアが、誤嚥性肺炎の予防には大切なのである(表1)。
表1 病原体と防御機能のバランス
「病原性」を低くする | 侵入物をコントロールする |
|
|
量・侵入部位をコントロールする | |
|
|
「防御機能」を高める | 喀出力を高める |
|
|
免疫力(局所リンパ球・好中球・液性免疫)を高める | |
|
前田圭介:“仕方ない”と思わないで! 誤嚥性肺炎.エキスパートナース2017; 33(12): 13より引用.
この「誤嚥のリスク」と「誤嚥性肺炎発症のリスク」を混同してしまうと、誤嚥リスクにばかり気を取られ、「誤嚥性肺炎の予防のためには“禁食”が必要」という誤った認識になってしまう。前田医師は、こうした短絡的な発想ではなく、栄養ケアも含めた多面的なケアの必要性を強調している。
詳しくは、『エキスパートナース』2017年10月号特集参照
照林社Webサイトはこちら
×close
×close