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2017/11/08

「看護」と「理工」が手をつないだ―臨床に還元できる技術革新を模索

ICTやAIなど革新的な技術テクノロジーの変化とともに、医学・看護領域におけるさまざまな技術革新が起こっている。さまざまな領域で、1つの学問領域だけでなく「学際的」に研究・開発が進められる状況が進む中で、これまで理工学領域と看護学との相乗りはなかなか果たせていない現状があった。「医工学」に現れているように、「医学」と「工学」の融合は多くの場で図られてきた歴史があるが、「看護」と「工学」は、臨床現場では実は密接な関連があるにもかかわらず、協同して共に取り組む場がなかったといえる。

そこで、理工学、特に医用理工学・生体工学と看護との関わりを、ケアに関する学術的進展を主眼においた学際的な取り組みとして強化することを目的として設立されたのが「看護理工学会」(理事長・真田弘美 東京大学大学院教授)だ。学会員は、「看護学・医学」と「理学・工学」との連携にたずさわる研究者だけでなく、看工連携に関わる医師、看護師、理学療法士をはじめとする医療者・実践者、機器開発に従事する企業研究者・開発者など、さまざまな領域にわたる。特に実学である看護学において、研究者だけでなく臨床家を巻き込むことが、この学会のねらいでもあろう。

2017年10月14、15日の両日、第5回看護理工学会学術集会が金沢市で開催された。大会長をつとめたのは、須釜淳子・金沢大学新学術創成研究機構教授で、第11回看護実践学会学術集会、国際リンパ浮腫フレームワーク・ジャパン研究協議会第7回学術集会との共催となった。

2日目のシンポジウム「看工ものづくりパートナーシップの構築」の概要を紹介しよう。座長は、真田弘美教授と土肥健純・東京電機大学教授だ。看護理工学が融合してイノベーションを生み出すためには学問領域だけでなく産業界とも協働しながら“ものづくり”を行う環境を構築する必要があることから、シンポジストに企業の立場から、テルモ株式会社の矢部久夫氏、株式会社モルテンの三村真季氏が登壇した。矢部氏は、東京大学大学院医学系研究科社会連携講座アドバンストナーシングテクノロジーにおいて、産学連携を進めている具体例として「点滴時の血管外漏出の早期発見を目的とした液晶感温フィルムの開発」について紹介した。三村氏は、26年前にエアマットレスを発売して以来、進化してきたマットレスの変遷について述べ、パートナーシップにおいて必要な要素として「理工学側も看護側もどちらも50:50の関係で意見が言え、お互いの思想を理解しあえる関係が重要」とまとめた。

その他、看護研究者の立場から村山陵子・東京大学大学院医学系研究科准教授は、矢部氏が紹介した「液晶感音フィルム」におけるパートナーシップについて、研究者の立場からコメントした。興味深かったのは、看護と工学との融合を図るための組織作りを進めている公益社団法人大阪府看護協会の高橋弘枝会長と、クリティカルケア看護領域からの発信をした道又元裕・杏林大学医学部付属病院看護部長のプレゼンだった。

高橋会長は、大阪府看護協会が「看護師が安全で安心してケアを提供できる環境」そして、「それらを患者・家族が享受できる環境」の一環として目指している、医療・看護・介護現場に必要な“ものづくり”について話された。この取り組みは看護師の職能団体だけは不可能なため、一般社団法人臨床医工情報学コンソーシアム関西と連携して進めていることを紹介した。臨床現場での看護師のニーズの掘り起こしと、医工学とのマッチングを図っているという。こうした動きが看護師の職能団体の中から起こってきたことは非常に興味深い。

道又氏は、看護管理者としての立場と、長年にわたるクリティカルケア看護領域での立場から、「工学」との連携に対する望みについて話された。クリティカルケア看護領域では、侵襲性の高い処置が多いため、生命に直結する機器類の多くは外国製が多い。その理由は、患者や医療者の方向を向いた利用者オリエンティドな指向性が日本企業にはあまり見られないこと、長期的な理念に基づいた研究・開発に対する認識が日本企業には乏しいことを指摘。例えば、酸素マスクを耳にかけるゴム紐一つとっても、長期の使用による潰瘍形成(医療関連機器圧迫創傷)の弊害を何度訴えても商品化されず30年以上も放っておかれた現状を挙げ、企業は「採算ベース」「目先の利益」だけに拘泥しないで、理念をもった商品づくりを心がけるべきと訴えた。看護理工学会がめざすべき方向に対して、新たに臨床現場から直球で投じられたこうした意見は、学会の将来にとって貴重な一石になるだろう。

詳しくは、下記の看護理工学会Webサイト参照

http://nse.umin.jp/

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