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2017/12/13

過剰で不必要な治療・看護を行わない「賢い選択」が広がっている

「Choosing Wisely」という言葉をご存知だろうか?これは文字通り「賢く選択する」ことで、患者、医療者が治療・ケアを賢く選ぶということである。いま世界的に問題になっている医学の問題に「過剰診療」や「薬剤の多剤併用」がある。必要以上に施行される医療は果たして患者にとっていいものかどうかという議論が起こっている。例えば、抗菌薬の乱用による薬剤耐性菌の増加や不適切な尿路カテーテル留置によるカテーテル関連尿路感染症などである。そこで、医療従事者と患者が対話を通じて、エビデンスがあって患者にとって真に必要で副作用の少ない医療(検査、治療、処置)を受けられるように「賢い選択」 をめざす国際的なキャンペーン活動が、「Choosing Wisely」である。

「Choosing Wisely」は、アメリカの内科専門医たちのグループが提唱し、現在、カナダ、イタリア、スイス、イギリス、オーストラリア、日本など世界20か所にその輪が広がっている。そして、国際的な協力関係を深めるため、 「Choosing Wisely International」が組織されている。各学会では、5つのリストといわれる推奨文を発表している。日本では総合診療指導医コンソーシアムが、下記のような「5つのリスト」 を発表している(General Medicine. 2015; 16: 3-4.)。

  1. 1健康で無症状の人々に対してPET-CT検査によるがん検診プログラムを推奨しない
  2. 2健康で無症状の人々に対して血清CEAなどの腫瘍マーカー検査によるがん検診を推奨しない
  3. 3健康で無症状の人々に対してMRI 検査による脳ドック検査を推奨しない
  4. 4自然軽快するような非特異的な腹痛でのルーチンの腹部CT検査を推奨しない
  5. 5臨床的に適用のないル-チンの尿道バルーンカテーテルの留置を推奨しない

アメリカ老年医学会が発表したリストには、「高齢者の不眠症に対する第一選択としてベンゾジアゼピン系睡眠導入剤は推奨しない」という項目があるが、日本老年医学会ではガイドラインで同様に、「ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、認知機能低下、転倒・骨折、日中の倦怠感などのリスクがあるので、使用はできる限り控える(エビデンス:高、推奨度:高)」としている1。このような薬物投与の制限や過剰な治療に対する制約は、高齢者医療の場で多く出てきている。それは、治療により病態からの回復を優先するか過剰診療によるQOL低下に着目するかという今日的課題でもあるだろう。

それでは、看護の「Choosing Wisely」にはどんなものがあるのだろうか。米国看護師学会(American Academy of Nursing: AAN)が「看護師と患者が質問すべき20のこと」というリストを挙げている。その中から日本の看護にあてはまりそうな項目を下記に示す。

  • 入院中の高齢患者を臥床状態のままに、あるいは椅子に座らせた状態のままにしてはいけない
  • 高齢の入院患者に身体抑制を行ってはいけない
  • 患者の必要性がない限り、あるいは患者が望まない限り、ルーチンケアのために寝ている患者を起こしてはいけない
  • 臨床的に特定の適用がない限り、膀胱留置カテーテルを留置してはいけない
  • 放射線皮膚炎の予防または治療の目的で、アロエベアを皮膚に用いてはいけない
  • 低酸素状態ではないがん患者に対して、呼吸困難感を楽にするための補助的な酸素投与を行ってはいけない
  • 妊婦への鎮痛薬として、妊婦本人によく説明せずに、またリスクを評価せずにオピオイド製剤を処方してはいけない

これらは、日本の看護シーンでも同様に取り入れられそうだ。同時に、「過剰な看護ケア」ということでは、これまでルーチンのように行われていた「褥瘡予防のための2時間ごとの体位変換」なども「Choosing Wisely」に入りそうであるため、臨床の場でもっと議論されてもいいだろう。看護専門雑誌『エキスパートナース』では2017年9月号から「治療・ケアをかしこく選択する!」(徳田安春著)という連載を始めている。

引用文献

1.日本老年医学会 日本医療研究開発機構研究費・高齢者の薬物治療の安全性に関する研究 研究班編:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015.メジカルビュー,東京,2015.

詳しくは、下記の「CHOOSING WISELY JAPAN」Webサイト参照
http://choosingwisely.jp/

  • ※この記事内容は公開当時の情報です。ご留意ください。

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