2018/2/21
日本医療労働組合連合会(医労連)では、医療現場で働く職員の労働改善のための取り組みを積極的に進めている。医療現場といえども労働の場であることにかわりはなく、「働き方改革」は大きなテーマである。今は主に医師の働き方に焦点が当てられているが、看護師の労働実態の把握、労働条件の改善も重要な課題だ。医労連では1988年以降ほぼ5年に1回「看護職員の労働実態調査」を実施しており、この度、2017年の最新調査の結果が発表された。これは、2018年に実施される「診療報酬・介護報酬ダブル改定」を見据えて1年前倒しで実施され、前回調査を上回る33,402人分のデータが集約された。
この調査によると、前回にも増して人手不足が深刻化し、年次有給休暇の取得率が下がり、夜勤・交替制勤務による過労や疲弊などの実態が浮き彫りになっている。さらに看護職場のハラスメント(セクシャルハラスメント、パワーハラスメント)なども見逃せない状況となっていることが報告された。
特に、「人手不足による過重労働」の実態は深刻化している。「1年前に比べた仕事量」を見ると、「大幅に増えた」21.3%と「若干増えた」36.7%を合わせた「増えた」割合は58.0%となり、2013年の調査同様約6割にのぼっている。「変わらない」が約3割、「減った」(「若干減った」4.4%+「大幅に減った」1.0%)割合はわずか5.4%にすぎない(下図)。
図 1年前に比べた仕事量
引用:2017年看護職員の労働実態調査結果報告
さらに、「大幅に増えた」の人を年齢別にみると、「20~24歳」14.7%、「25~29歳」18.4%、「30~34歳」20.6%、「35~39歳」20.9%、「40~49歳」25.6%、「50~59歳」24.3%と、40歳以上が高率になっている。継続年数別にみても、「大幅に増えた」人は、「1~3年未満」16.2%、「3~5年未満」19.2%、「5~10年未満」21.6%と、勤続年数が増すとともに増加している。つまり、経験豊富なベテラン層に重い負担がかかっているようだ。
有給休暇はどうだろう。年次有給休暇の取得平均値は8.9日、「10日以上」は41.4%で、完全消化と考えられる「20日以上」は5.5%しかいない。一方、「5日以下」は29.9%で、まったく取れなかった人も2.7%いた。まったく取れなかった人の年齢は、「25歳以上」2.4%なのに対し、「20歳~24歳」では4.8%と2倍もいることがわかった。若い看護師は有給休暇が取りづらい実態があるようだ。
勤務中の休憩時間は「きちんと取れている」のは「日勤」24.7%、「準夜勤務」14.8%、「深夜勤務」19.9%となっており、法律で定められた休憩時間の取得ができていないのが実態だ。特に、「準夜勤務」では「まったく取れていない」(7.4%)「あまり取れていない」(36.5%)で、43.9%もの人が休憩が取れていない。「深夜勤務」でも「まったく取れていない」(3.5%)「あまり取れていない」(23.7%)を合わせて27.2%が休憩が取れていない。長時間勤務が余儀なくされる「2交替夜勤」でも、約2割は休憩時間が取れていないという。このように、長時間夜勤時に休憩や仮眠が取れていない実態が浮き彫りになった。
これらの調査結果により、看護マンパワー不足と過重負担は深刻度を増し、過酷な労働実態が明らかになったことから、医労連では、看護師が長く働き続けられる健全な勤務環境整備のための法的な整備を訴えている。
詳しくは、下記の医療労働組合連合会Webサイト参照
http://www.irouren.or.jp/research/
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