2018/3/7
高齢者医療のトピックとして注目され、栄養リハビリテーション推進の火付け役になった「サルコペニア」。サルコペニアは、「高齢期にみられる骨格筋量の低下と筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下により定義される」とされている。サルコペニアは、日常生活活動(ADL)の低下、フレイル、転倒・骨折、入院、施設入所、死亡などとの関連が明らかにされ、診断・治療に対する関心が高まっている。2016年には国際疾病分類(ICD-10)に登録され、世界的に「疾患」として注目が集まっている。そこで、日本サルコペニア・フレイル学会では「サルコペニア・フレイル診療ガイドライン」を策定することを決め、作成委員会で作業を行ってきた。そして、2017年12月、わが国で初の「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」が発行された。
このガイドラインは、Clinical Question(CQ)形式で構成され、CQに対する簡潔なステートメントとわかりやすい解説によって詳細に述べられている。厳密なシステマティックレビューによるエビデンスの評価が実施されており、サルコペニアの診療を行う上で必要となるエビデンスが示されている。第1章から第4章に分けられ、それぞれ3~5項目のCQで構成されており、サルコペニアの定義に始まり、診断、疫学、予防、治療が示されている。サルコペニアの疫学:CQ2として、サルコペニアの要因、危険因子について、「サルコペニアは、加齢が最も重要な要因であるが、活動不足、疾患(代謝疾患、消耗性疾患など)、栄養不良が危険因子である。」と述べられている。この他、看護に関連するCQは以下のとおりである。
第3章 サルコペニアの予防
CQ1 栄養・食事がサルコペニア発症を予防・抑制できるか?
ステートメント:適切な栄養摂取、特に1日に(適正体重)1kg当り1.0g以上のたんぱく質摂取はサルコペニアの発症予防に有効である可能性があり、推奨する。
(エビデンスレベル:低、推奨レベル:強)
CQ2 運動がサルコペニア発症を予防・抑制できるか?
ステートメント:運動習慣ならびに豊富な身体活動量はサルコペニアの発症を予防する可能性があり、運動ならびに活動的な生活を推奨する。
(エビデンスレベル:低、推奨レベル:強)
CQ3 生活習慣病、慢性疾患に対する治療がサルコペニア発症を予防・抑制できるか?
ステートメント:高血圧、糖尿病、脂質異常症に対する治療薬、アンドロゲン薬、また糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、慢性心不全、肝不全(肝硬変)に対する運動・栄養管理がサルコペニアの発症を予防する可能性はあるが、一定の結論は得られていない。
(エビデンスレベル:低、推奨レベル:弱)
編集:サルコペニア診療ガイドライン作成委員会
発行:一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会、国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
A4 国際判、82 頁、定価:本体2200円+税
ライフサイエンス出版
詳しくは、下記の各WEBサイト参照
・一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会
http://jssf.umin.jp/jssf_guideline2017.html
・国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
http://www.ncgg.go.jp/cgss/news/20180117.html
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