2018/4/17
昨今、施設職員による高齢者への虐待事件の報道を目にすることが多いが、このたび厚生労働省から、高齢者虐待に関する調査結果が発表された。これは、いわゆる「高齢者虐待防止法」に基づいて、平成27 年度の高齢者虐待の対応状況等を把握するために、全国1,741 市町村と47 都道府県で実施されたものだ。
それによると、高齢者虐待と認められた件数は、養介護施設従事者等によるものが平成27年度で408件であり、前年度より108件(36.0%)増加、養護者によるものは15,976件で前年度より237件(1.5%)増加したという。また、市町村への相談・通報件数は、養介護施設従事者等によるものが1,640件であり、前年度より520件(46.4%)増加したのに対し、養護者によるものは26,688件であり前年度より897件(3.5%)増加している。養介護施設従事者等とは介護老人福祉施設など養介護施設又は居宅サービス事業など養介護事業の業務に従事する者、養護者とは高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等である。いずれも、養介護施設従事者等による虐待が増えていることがわかる。
虐待の事実が認められた施設・事業所の種類では、「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」125件(30.6%)が最も多く、次いで「有料老人ホーム」85件(20.9%)、「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」65件(15.9%)、「介護老人保健施設」37件(9.1%)となっている。
それでは、どのような虐待が多いのだろうか。養介護施設従事者等による被虐待高齢者の総数778人のうち、虐待の種別では、「身体的虐待」が478人(61.4%)で最も多く、次いで「心理的虐待」215人(27.6%)、「介護等放棄」100人(12.9%)(複数回答)となっている(下図)。虐待を受けた高齢者のうち、「身体拘束あり」は248人(31.9%)であった。
図 高齢者虐待の内容
引用:http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000155598.html
虐待の程度(深刻度)では、5段階評価で最も軽い「1-生命・身体・生活への影響や本人意思の無視等」が370人(47.6%)、最も重い「5-生命・身体・生活に関する重大な危険」は25人(3.2%)であった。虐待による被虐待高齢者の死亡事例も1件あったという。
こうした実態に対して市町村ではどのような対応をとっているのであろうか。「高齢者虐待の対応の窓口となる部局の住民への周知」は1,403市町村(80.6%)で実施されている。一方、高齢者虐待防止ネットワークの構築のうち、行政機関、法律関係者、医療機関等からなる「関係専門機関介入支援ネットワーク」の構築への取組みが855市町村(49.1%)、介護保険サービス事業所等からなる「保健医療福祉サービス介入支援ネットワーク」の構築への取組みが865市町村(49.7%)と半数程度に止まっているという。
詳しくは、下記の厚生労働省Webサイト参照
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000155598.html
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