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2018/9/5
厚生労働省から、認知症の人の意思決定支援に関するプロセスや留意点をまとめた「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」が発表された。本ガイドラインは、「認知症の人が、自らの意思に基づいた日常生活・社会生活を送れることを目指すもの」である。対象は、特定の職種や特定の場面に限定されるものではなく、医師、看護師、保健師、薬剤師、ケアマネジャー、認知症地域支援推進員やケースワーカー、そして家族など、認知症の人の意思決定支援にかかわる全ての人(意思決定支援者)である。
厚生労働省の「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では、わが国の認知症高齢者の数は2012年で462万人、2025年には約700万人に上ると推計されている。新オレンジプランの基本的な考え方は、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現」である。
認知症の人は、自らの意思を言語によって示すことが困難な場合が多い。本ガイドラインは、はじめて認知症の人の意思決定を支援するプロセスをまとめた内容となる。
意思決定支援の基本原則としては、①本人の意思の尊重、②本人の意思決定能力への配慮、③チームによる早期からの継続的支援が挙げられている。②の本人の意思決定能力とは、「説明の内容をどの程度理解しているか(理解する力)、またそれを自分のこととして認識しているか(認識する力)、論理的な判断ができるか(論理的に考える力)、その意思を表明できるか(選択を表明できる力)によって構成される」とされている。また、意思決定の支援内容は本人に繰り返し確認し、その後の生活に影響を与えるような支援を行った場合には、その都度記録を残しておくことが必要としている。
本ガイドラインではチームによる支援が強調され、意思決定の支援にあたっては、本人の意思を踏まえたうえで、家族・医療関係者等がチームとなって継続的に必要な支援を行う体制(意思決定支援チーム)が必要とされている(下記概念図)。
具体的には、意思決定支援の方法・プロセス等が適切であるかどうかを話し合う「意思決定支援会議」を行い、話し合った内容はその都度文書として残す(この会議は、地域ケア会議やサービス担当者会議等と兼ねることが可能)ことである。意思決定支援のプロセスは、記録して振り返ることが必要とされている。
概念図
これまで認知症の人の意思を尊重・確認することが重要とされながらも、そのプロセスについては明確な規定がなかった。本ガイドラインは、地域包括ケアシステムや在宅医療における多職種間の情報共有において、重要な指針となるだろう。
詳しくは、下記の厚生労働省Webサイト参照
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212395.html
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