2018/9/20
厚生労働省は、各都道府県等に対して「医療機関における薬剤耐性アシネトバクター感染症等の院内感染対策の徹底について」を公表した。
アシネトバクターは、土壌や河川水などの自然環境中に生息する環境菌で、健康な人の皮膚などから見つかることもあるが、通常は無害とされている。感染症の流行は、通常、集中治療室の患者やその他の重症患者で起こる。そして治療の際には抗菌薬の投与を行うが、その選択や投与量については確立されていない。また、一度発生すると病院内に広がることがある。特に、人工呼吸器のような湿度の高い環境を好む一方、乾燥した環境でも数週間以上生存できることが知られているため、人の皮膚や医療機器、手すり等の院内環境にも生息する。したがって、手洗いや消毒が不完全であると、汚染された医療器具や医療従事者の手などを通じて、他の患者に伝播することがある。
多剤耐性アシネトバクターは、主に細菌感染症に対する抵抗力が低下した患者に人工呼吸器関連肺炎、血流感染症、創部感染症などさまざまな病気を引き起こす。症状は病気の種類によって異なり、感染症や症状を起こさずに付着しただけの保菌状態となることも多く、専門家による慎重な判断が必要である。 薬剤耐性アシネトバクター感染症は、感染症法にある5類感染症で、全数届出疾患に指定されている。
院内感染が疑われる事例が報告された医療機関では再発防止策として、「抗菌薬使用例に対する、抗菌薬適正使用支援チーム活動強化」「全職員に対する『病室入退室時は手指衛生を厳守する』というルールの厳格化」「薬剤耐性アシネトバクター検出時の感染対策マニュアルを見直し、チェックリストを作成」などを挙げている。
厚生労働省は、薬剤耐性アシネトバクター感染症等の院内感染を疑う事例を把握した場合には、速やかに報告するように求めている。
詳しくは、下記の厚生労働省Webサイト参照
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/180808-1.pdf
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