2018/10/5
東京都健康長寿医療センター研究所の藤原佳典研究部長の研究グループは、日常生活に問題のない健康な高齢者であっても、社会的な孤立と閉じこもり傾向がある人は、どちらも該当しない人と比較して6年後の死亡率が2.2倍高まると発表した。
これまでも「社会的孤立状態」は、高齢者の死亡率を高めること、さらに外出頻度が低い「閉じこもり」(外出頻度が週1日以下)の状態にある高齢者も死亡率が高いと言われていたが、これらの影響は別々に検討されてきた。また、完全に閉じこもりになる前の「閉じこもり傾向」(外出頻度が1日1回未満)の状態でも健康に悪影響を与えるかどうかははっきりしていなかった。
同研究グループでは、「社会的孤立」と「閉じこもり傾向」が重なった場合、高齢者の健康にどのような影響を与えるかを調査した。調査は、2008~2014年に首都圏近郊(埼玉県和光市)で行った郵送調査結果によるものだ。この調査では、公共交通機関の使用や日常品の買い物、食事の用意などの日常生活動作に問題のない健康な研究参加者を、「社会的孤立」および「閉じこもり傾向」の有無の組み合わせで4群に分け、6年間の死亡率の違いを検討した。
「社会的孤立」とは、同居家族以外との対面および非対面(電話やメールなど)のコミュニケーション頻度が両者を合わせても週1回未満の者、「閉じこもり傾向」とは、普段外出する頻度(買い物、散歩、通院など)が2~3日に1回程度以下の者(すなわち1日1回未満)とした。
その結果、「社会的孤立」と「閉じこもり傾向」があるグループでは、追跡期間が長くなるにつれて死亡率が高くなり、調査開始から6年後には2.2倍となることがわかった(図1)。
図1 追跡調査の結果
この結果を踏まえて同研究グループでは、「孤立に伴うコミュニケーション・ソーシャルサポート面の欠乏と、閉じこもり傾向に伴う身体・認知・精神的不活動が相乗的に我々の健康状態に影響を及ぼしていることを示唆しています」としている。そのため、「交流なき外出」と「外出なき交流」の両者に気をつける必要があると指摘している。また、「完全に閉じこもってしまう前の閉じこもり傾向の状態であっても健康に及ぼす負の影響があるため、予防的な観点から早めの注意が必要」と提言している。
詳しくは、下記の東京都健康長寿医療センター研究所Webサイト参照
http://www.tmghig.jp/research/release/cms_upload/52eb95d594147c2beea2b8e989c04080_3.pdf
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