2018/10/25
国は、医療計画に組み込むなど、看護師の特定行為研修の推進を強力に推し進めている。厚生労働省は8月31日、特定行為研修制度の指定研修機関として、富山西総合病院など19機関を新たに指定したと発表した。これによって、2018年8月現在、36都道府県、87機関で特定行為研修が行われていることになる。これまでの修了者は全国で1006名。日本慢性期医療協会も、積極的に研修を行っている機関の1つで、現在119名の修了者を出している(同年9月末に29名修了の予定)。そこで、同協会では、看護師特定行為研修修了者119名に対してアンケートを行い、その結果を発表した。
それによると、特定行為の実施状況で最も多かったのは「気管カニューレの交換」の64.4%であり、次いで「中心静脈カテーテルの抜去」が41.7%、「褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去」の37.9%と続いている(表1)。
特定行為 | 実施率 |
---|---|
気管カニューレの交換 | 64.4% |
中心静脈カテーテルの抜去 | 41.7% |
褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去 | 37.9% |
脱水症状に対する輸液による補正 | 24.8% |
感染徴候がある者に対する薬剤の臨時投与 | 19.2% |
創傷に対する陰圧閉鎖療法 | 18.1% |
インスリンの投与量の調整 | 13.3% |
持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 | 11.4% |
抗精神病薬の臨時の投与 | 9.5% |
侵襲的陽圧換気の設定の変更 | 8.6% |
抗けいれん剤の臨時の投与 | 7.6% |
非侵襲的陽圧換気の設定の変更 | 6.7% |
人工呼吸器からの離脱 | 2.9% |
抗不安薬の臨時の投与 | 2.9% |
人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整 | 1.0% |
(http://jamcf.jp/chairman/2018/chairman180913.pdfより引用)
気管カニューレの交換の実施率が高いのは、慢性期の病院では気管切開患者が多く入院しているため「気管カニューレの交換」の実施率が高いことが考えられる。人工呼吸器に関する項目が全体的に実施されていないのは、呼吸器管理をしている患者が少ないためと考えられるとしている。
また、特定行為ごとにばらつきはあるものの、特定行為を実施しなかった理由としては「対象患者がいなかった」が最も多く、次に「医師の合意が得られない」となっている。特定行為を実施しなかった「その他」の理由で目立つのは、「管理業務中心で病棟業務に従事していないため」というものであった。
同調査では、特定行為の問題点について以下のような意見を挙げている。
国が強力に推進している指定研修機関の整備はもちろん大切だが、上記のような問題点が現場から指摘されていることを踏まえて、修了者が特定行為を適切に行える環境づくり、そして、現場の意識改革が必要になるだろう。
日本慢性期医療協会では今後、特定行為研修修了者を対象とするフォローアップ研修を行うほか、日本看護協会とも協力し合いながら、その制度の普及に向けて取り組む方針を示している。
詳しくは、下記の日本慢性期医療協会Webサイト参照
http://jamcf.jp/chairman/2018/chairman180913.pdf
×close