2018/12/19
超高齢化の加速とともにパーキンソン病罹患者は増えているが、2018年5月、『パーキンソン病診療ガイドライン』が7年ぶりに改訂された。パーキンソン病は、黒質のドパミン神経細胞が障害されることで発症する原因不明の神経変性疾患である。主な運動症状には安静時振戦、筋強剛、運動緩慢などがあり、自律神経症状やうつ病、味覚障害などの非運動症状もある。療法にはL-ドパなどの「薬物療法」、脳深部刺激療法などの「手術療法」、リハビリテーションなどの「非薬物療法」などがある。
これまで『パーキンソン病治療ガイドライン 2002』が作成され、2011年に改訂版『パーキンソン病治療ガイドライン 2011』が発行された。今回はその改訂版として作成され、治療以外にも診断基準や病因、遺伝子、画像所見なども解説されているため、名称を『診療ガイドライン』と変更した。今回の改訂は、『Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014』で推奨されているGRADEシステムに準拠して作成され、エビデンスレベルと推奨レベルが示された。近年、多くのガイドラインがGRADEシステムを採用しており、日本褥瘡学会が改訂作業を進めている褥瘡予防・治療ガイドラインも同様である。
今回は、診断面において、パーキンソニズムの定義が変更された。従来は、4大症状として典型的な左右差のある安静時振戦、筋強剛、運動緩慢、姿勢保持障害が挙げられ、このうち2つ以上が存在することとしていた。今回は、運動緩慢が見られることが必須となっており、加えて静止時振戦か筋強剛のどちらか1つ、または両方が見られるものと定義されている。姿勢保持障害が診断基準から外れた点が大きな特徴だが、これは姿勢保持障害が進行期になってから出現するためとされる。
ほかにも、2016年に承認された、胃ろうを作って腸管内に持続的に薬を投与する「L-ドパ持続経腸療法」がはじめてガイドラインに盛り込まれたり、運動障害により生活に支障をきたす場合、早期パーキンソン病の治療はL-ドパで開始することを提案している。
監修:日本神経学会
編集:「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会
B5判、308頁、定価5,200円+税
発行:医学書院
詳しくは、下記の日本神経学会Webサイト参照
https://www.neurology-jp.org/index.html
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