2019/1/18
国をあげて「働き方改革」への取り組みが進むなかで、職場における過重労働や過労死が社会問題となっている。そんな動きを受けて、厚生労働省から、過労死等の概要や防止施策をまとめた「平成30年版過労死等防止対策白書」が公表された。今回は、重点業種として「医療」が取り上げられ、労災認定事案の分析、労働時間等の調査結果がまとめられた。アンケート調査の対象は病院4,000件(有効回答1,078件)、医師20,255人(有効回答3,697件)、看護職員20,266人(有効回答5,692件)であった。ここでは看護職員の結果を紹介する。
労災認定においては精神障害の事案の割合が高く(脳・心臓疾患1件、精神障害52件)、そのほとんどは女性であり、約半数が30歳代以下という結果であった。要因として考えられる業務によるストレス内容は、「患者からの暴言・暴力」や「患者の自殺の目撃」等が76.9%を占め、発生時刻は0時~8時までの深夜帯に多い。
次に、時間外労働時間について見てみよう。平均的な1か月(通常期)における時間外労働時間は「10時間未満」(34.6%)が最も多く、次いで「10時間以上20時間未満」(14.8%)、平均は16.3時間であった。また、勤務時間が終了しても病院から早く退出できない、または勤務開始時間よりも早く出勤する理由には「看護記録等の書類作成のため」(57.9%)が挙げられ、次いで「人員が足りないため」(48.5%)、「院内の研修会・勉強会に出席するため」(47.9%)などがあった。やはり、看護記録のために時間外勤務を余儀なくされている実態は変わらないようだ。現場では、医療安全の過剰な重視や診療報酬算定のために看護師が書かなくてはいけない業務が多すぎるのかもしれない。
業務に関連したストレスや悩みでは「職場の人間関係」(41.8%)が最も多く、「夜勤(宿直勤務含む)の負担の大きさ」(37.8%)、「時間外労働の長さ」(36.7%)などが続く。
過重労働防止のために病院において必要だと感じる取組みには「看護職員を増員する」(78.4%)が挙げられ、次いで「看護補助者を増員する」(60.0%)、「夜勤可能な看護職員を増員する」(53.2%)であった。病院側の調査によると、実施している過重労働防止の取組みでは「医師事務作業補助者や看護補助者を増員している」(59.5%)が最も多く、次いで「健康相談又はメンタルヘルスに関する相談の窓口または担当者を設置している、専門職(リエゾンナース等)を配置している」(55.2%)、「院内保育施設を設置・充実させている」(52.8%)という回答であった。医療現場で過重労働を改善するためには、人員の確保は最低限必要だが、医師や看護師の業務そのものの見直しとタスクシフトが欠かせないと言えるだろう。
■所定外労働時間が発生する理由
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■業務に関連するストレスや悩みの内容
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詳しくは、下記の厚生労働省Webサイト参照
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