2021/8/10
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、コロナ対応だけでなく日々の医療業務にもさまざまな影響を及ぼしている。摂食嚥下障害の評価や治療にも少なからず影響しているようだ。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会では、第1波流行期(令和2年2月から6月)および第3波流行期(令和2年12月から令和3年3月)における、COVID-19患者の摂食嚥下障害評価・治療等の実態を調査し、学会のWEBサイトで公表している。第1波と第3波では、COVID-19に対する知見の積み重ね等を受けての影響か、患者数や対応方法に変化が認められたという。
一例として、流行初期である第1波の際は、一般診療における嚥下内視鏡検査の件数減や検査控えが、回答の7割程度にみられたのに比較し、第3波の調査結果ではその割合は3割程度に低下し、約5割の施設で(所定のPPE(感染防具)等を着用して)通常通り行っていた、との回答になっている。
図 摂食嚥下障害患者に対する嚥下内視鏡検査の実施状況
日本摂食嚥下リハビリテーション学会:COVID-19患者の摂食嚥下障害評価・治療等の実態調査報告.を元に作成.
このように、一般診療については全体的に第1波のときに比較して摂食嚥下機能評価や治療の差し控えは減り、COVID-19拡大以前の状況へと回復傾向にあるものの、感染防護具の着用などによる負担の増加やコミュニケーション困難が課題として挙がっている。
また、COVID-19陽性患者への治療を「行った」と回答した施設は第1波、第3波いずれの際も1割未満にとどまった。その理由としては、「COVID-19の摂食嚥下障害患者がいなかった」というものが半数以上ではあったが、施設から直接的な診療を制限されていたり、診療を行う機会がなかった、との回答もそれぞれ1割前後みられた。
特に重症化した患者では、長期臥床や人工呼吸器の使用によって摂食嚥下機能の大幅な落ち込みも懸念される。陽性者への安全・適切な対応や、陰性化してからの対応など、今後の調査検討、情報共有が待たれる。
詳しくは、下記の日本摂食嚥下リハビリテーション学会Webサイト参照
「COVID-19患者の摂食嚥下障害評価・治療等の実態調査報告」
・ 第1波流行期(令和2年2月から6月)の調査
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/news/news_20200923.pdf
・ 第3波流行期(令和2年12月から令和3年3月)の調査
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/news/news_20210702.pdf
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