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2019/3/14

中年期の肥満は、高齢期の認知症発症、ADL低下のリスク~「高齢者肥満症診療ガイドライン2018」公表~

日本肥満学会は2000年に「新しい肥満の判定と肥満症の診断基準」を発表し、BMIで規定される肥満(obesity)と医学的に減量を必要とする肥満症(obesity disease)とを区別し、肥満症を治療・管理の対象とするとした。

日本老年医学会では、この度、日本肥満学会の協力を得て「高齢者肥満症診療ガイドライン2018」を公表した。日本老年医学会は、これまで高齢者の「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」を対象にしたガイドラインをまとめている。本ガイドラインでは、認知症・ADL低下の観点から新たにクリニカルクエスチョン(CQ)を設定し、システマティックレビューを実施している。構成は、「Ⅰ 肥満または肥満症の診断」(CQ2項目)、「Ⅱ 肥満症の影響」(CQ10項目)、「Ⅲ 肥満症の治療」(CQ6項目)となっており、肥満の特徴から認知症・ADL低下との関係、食事療法・運動療法などについても解説している。CQの例を下記に示す。

■Ⅰ 肥満または肥満症の診断

Ⅰ-CQ1 高齢者の肥満または肥満症はどのような特徴があるか?
【要約】
●高齢者の肥満または肥満症は若い人と同じ基準で診断するが、BMIが体脂肪量を正確に反映しないことも少なくないので注意する。
●BMI 高値における死亡のリスクがむしろ減少するというobesity paradoxが存在する場合がある。
●ウエスト周囲長やウエスト・ヒップ比はBMIよりも死亡のリスク指標となる。
●加齢とともに肥満にサルコペニアが合併したサルコペニア肥満が増える。

■Ⅱ 肥満症の影響

Ⅱ-CQ1 中年期または高齢期の肥満は高齢期の認知症発症のリスクとなるか?
【要約】
●中年期の肥満は高齢期の認知症発症のリスクであるので注意する(推奨グレードA)。
●高齢者の肥満は認知症発症のリスクとはならず、認知症発症リスクの低下と関連する。

Ⅱ-CQ4-1 高齢期の肥満はADL低下のリスクとなるか?
【要約】
●高齢期の肥満は、高齢期のADL低下のリスクとなるので注意する必要がある(推奨グレードA)。
●中年期からの肥満は、高齢期のADL低下のリスクとなるので注意する必要がある(推奨グレードA)。

Ⅱ-CQ8 高齢者の肥満は心血管疾患の発症リスクとなるか?
【要約】
●高齢者の肥満が心血管疾患の発症リスクとなるとする明らかなエビデンスはない。
●一方、ウエスト・ヒップ比の高値やメタボリックシンドロームは75歳未満の高齢者において心血管疾患の発症リスクとなる(推奨グレードB)。

■Ⅲ 肥満症の治療

Ⅲ-CQ3 肥満症を治療すると認知機能は改善するか?
【要約】
●肥満症の治療により、認知機能は改善する可能性がある(推奨グレードB)。

Ⅲ-CQ4 高齢者の減量で骨格筋量は減少するか?
【要約】
●肥満症の高齢者では減量により、脂肪量とともに骨格筋量が減少する可能性がある(推奨グレードB)。
●適切なカロリーを設定し、運動を併用することにより骨格筋量または身体機能を低下させることなく減量が可能である(推奨グレードB)。

高齢者肥満の食事療法

1.減量による利益とリスクを勘案して、減量を行う。
2.体重減少のためには、食事摂取エネルギーの減量が必要である。
3.エネルギー量は1日25kcal×標準体重(kg)以下を目安とし、現在の体重から3~6ヵ月で3%の減少を目指す。
4.指示エネルギーの50から60%を糖質、15~20%をたんぱく質、20~25%を脂質とする。
5.高齢者における糖質摂取制限の安全性は確認されていないことから、極端な糖質制限はのぞましくない。
6.サルコペニアやフレイルの予防のためには、たんぱく質の摂取は少なくとも1.0 g/kg標準体重/日をとることが望ましい。
7.サルコペニア肥満では十分なたんぱく質の摂取が必要とされるが、重度の腎障害では注意する。
8.ビタミン、ミネラルの十分な摂取が必要である。
9.フォーミュラ食を1日1回利用することで減量できる場合もある。
10.80 歳以上の高齢者の減量に関してはエビデンスがない。

引用元
日本老年医学会「高齢者の生活習慣病管理ガイドライン」作成ワーキング.高齢者肥満症診療ガイドライン 2018.日老医誌 2018;55(4):464—538 に掲載

詳しくは、下記の日本老年医学会Webサイト参照

http://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/55/4/55_55.464/_pdf/-char/ja

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