2019/3/28
開催が1年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックだが、訪れる人々は、参加選手約1万2,000人、観客50万~90万人/日、スタッフ・ボランティアなどを合わせると延べ1,000万人と予想されている。さらに、開催時期が7月下旬から9月初旬の盛夏とあって、選手のみならず、観客の健康管理が心配される。
そこで、「2020年東京オリンピック・パラリンピックに係る救急・災害医療体制を検討する学術連合体」 看護ワーキンググループから、「2020年東京オリンピック・パラリンピックにおける看護師の対応ガイドライン」が公表された。この団体は、日本救急医学会、日本外傷学会などの23団体から構成されている(2018年9月現在)。
医師や看護師などの医療従事者には、熱中症を代表とする急性症状への対応、多数傷病者事故(Mass Casualty Incident:MCI )とテロによる銃創・爆傷患者への対応、感染症対策、外国人対応、重症患者のICU管理などへの対応が求められている。本ガイドラインは、これらの診療における看護師の役割を解説したものだ。項目ごとに背景・診療の概要などを説明したうえで、看護師の役割に焦点があてられている。各項目の概要は以下の通りだ。
「Ⅰ. 大規模イベント会場の医療救護」では、救護班のチーム調整や医療資材・薬剤の管理、現場でのトリアージ、ファーストエイド(急な病気やけがをした人を助けるために取る最初の行動)、後方転送時の連絡や家族のサポート、業務内容ごとに必要となる記録などについて解説されている。
「Ⅱ. 熱中症への対応」では、熱中症の応急処置などについてまとめられ、「Ⅲ. 多数傷病者事故(MCI)」では、多数傷病者が発生する状況、発生現場や医療機関における対応、初期対応組織の立ち上げと指揮系統の確立、ICU入院管理などについて説明されている。
「Ⅳ. 銃創・爆傷患者」では、事態対処医療(テロなど不測の事態が発生した時の救急看護・医療システム)、銃創・爆傷患者への初期対応(診療内容)、治療の優先順位、傷病者評価の手順、院内診療における看護(銃創・爆傷)などについて解説されている。
「Ⅴ. 感染症対策」では、配慮が必要な感染症の特徴と対策などがまとめられ、「Ⅵ. 外国人対応」では、コミュニケーションの工夫や社会文化背景を配慮した対応の必要性などについて述べられている。「Ⅶ. ICU管理」では、診療内容やICUチームの編成、災害対応の段階に応じた病床管理などについて説明されている。
本ガイドラインは看護の役割を総論的に述べたものであることから、「言及している処置の実際に関しては他の専門書等を参照して欲しい」、「示されている内容は、東京オリンピック・パラリンピック時の医療対応マニュアルでは無く、さらに強制力を持つものでも無い」、「会場現場で直接対応する看護師や傷病者が収容される病院の看護師が身につけておくと良い、知識とスキルの概要を述べたガイドラインとして活用して欲しい」とされている。
詳しくは、下記の2020年東京オリンピック・パラリンピックに係る救急・災害医療体制を検討する学術連合体Webサイト参照
http://2020ac.com/documents/ac/03/1/1/2020AC_Ns_guideline_201902.pdf
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