2019/4/25
地域包括ケアシステムの構築など、医療・看護を取り巻く状況が変化していることを受け、看護管理者に求められる役割も広がっている。日本看護協会では、2018年度に有識者による検討委員会を設置して検討を続け、その成果として「病院看護管理者のマネジメントラダー 日本看護協会版」を公表した。
本ラダーは、「病院看護管理者が地域まで視野を広げた看護管理を実践するために必要とされる能力を目標として可視化したものであるとともに、病院看護管理者の計画的かつ段階的な育成のための指標を示している」とされている。対象は、病院看護管理者だけでなく、これから病院看護管理者になる人材も含めた病院勤務の看護職としている。
ラダーは、病院看護管理者の能力を「組織管理能力」「質管理能力」「人材育成能力」「危機管理能力」「政策立案能力」「創造する能力」の6つのカテゴリーで示している(定義は下表の通り)。
■6つの能力の定義
能力 | 定義 |
---|---|
組織管理能力 | 組織の方針を実現するために資源を活用し、看護組織をつくる力 |
質管理能力 | 患者の生命と生活、尊厳を尊重し、看護の質を組織として保証する力 |
人材育成能力 | 将来を見据えて看護人材を組織的に育成、支援する力 |
危機管理能力 | 予測されるリスクを回避し、安全を確保するとともに、危機的状況に陥った際に影響を最小限に抑える力 |
政策立案能力 | 看護の質向上のために制度・政策を活用および立案する力 |
創造する能力 | 幅広い視野から組織の方向性を見出し、これまでにない新たなものを創り出そうと挑戦する力 |
Ⅰ~Ⅳまでの4つのレベルを設定しており、これらは病院看護管理者として必要な能力を獲得する段階を示している。参考として各レベルに相当する職位については、Ⅰが「主任」、Ⅱが「看護師長」、Ⅲが「副看護部長」、Ⅳが「看護部長」をおおよその目安としている。
具体的には、レベルⅠは「自部署の看護管理者とともに看護管理を実践できる」、レベルⅡは「自部署の看護管理を実践できる」、レベルⅢは「トップマネジメントを担う一員として看護管理を実践できる」、レベルⅣは「病院全体の管理・運営に参画するとともに地域まで視野を広げた看護管理を実践できる」となっている。
縦軸に上記の6つの能力を、横軸に各レベルを配置し、それぞれの指標が詳細に記されている(下記に一部抜粋したラダーを掲載)。
■病院看護管理者のマネジメントラダー 日本看護協会版(一部抜粋)
レベル・定義 | |||||
---|---|---|---|---|---|
Ⅰ 自部署の看護管理者とともに看護管理を実践できる |
Ⅱ 自部署の看護管理を実践できる |
Ⅲ トップマネジメントを担う一員として看護管理を実践できる |
Ⅳ 病院全体の管理・運営に参画するとともに地域まで視野を広げた看護管理を実践できる |
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能力・定義 | 組織管理能力 組織の方針を実現するために資源を活用し、看護組織をつくる力 |
・自部署の方針の策定に参画し、自部署全体に浸透させることができる | ・看護部門の方針を理解した上で、自部署の方針を策定し、自部署全体に浸透させることができる | ・看護部門の方針の策定に参画し、看護部門全体に浸透させることができる | ・自病院の管理・運営に関するミッションに照らして課題を明確にし、病院経営陣の一員として改善策を考え、行動することができる |
質管理能力 患者の生命と生活、尊厳を尊重し、看護の質を組織として保証する力 |
・看護に関するデータの中から自部署の看護実践の改善に必要なデータを選別することができる | ・自部署の看護実践についてデータを活用して可視化し、評価・改善することができる | ・自病院の看護実践についてデータを活用して可視化し、継続的に評価するシステムを構築することができる | ・自病院の看護実践についてデータを活用して可視化し、継続的に評価するシステムを構築することができる | |
人材育成能力 将来を見据えて看護人材を組織的に育成、支援する力 |
・自部署のスタッフを育成する体制を整備することができる | ・個々のスタッフのキャリア志向を把握し、計画的な指導・助言によりキャリア発達を支援することができる | ・看護部門のスタッフを育成する体制を整備することができる | ・自病院の人材育成に関する方針を策定することができる | |
危機管理能力 予測されるリスクを回避し、安全を確保するとともに、危機的状況に陥った際に影響を最小限に抑える力 |
・未然防止や再発防止の視点をもって業務プロセスを見直し、部署内の改善を徹底することができる | ・自部署に関連する事故や問題のリスクを分析し、予防策を講じることができる | ・看護部門に関連する事故や問題に対して、リスクを分析し、予防および再発防止のための対応策を立て、実施に向けて各部署への支援・実施状況の評価をすることができる | ・看護部門に関連する事故や問題に対して、リスクを分析し、予防および再発防止のための対応策を立て、実施に向けて各部署への支援・実施状況の評価をすることができる | |
政策立案能力 看護の質向上のために制度・政策を活用及び立案する力 |
・既存の医療制度・政策に関する動向を情報収集することができる | ・自部署の看護の質向上に既存の制度・政策を活用することができる | ・看護の質向上に向けて、各部署が既存の制度・政策を活用できるよう支援することができる | ・既存の制度・政策を活用し、自病院及び地域の課題解決を図ることができる | |
創造する能力 幅広い視野から組織の方向性を見出し、これまでにない新たなものを創り出そうと挑戦する力 |
・慣習にとらわれず、新たな看護サービスの提供方式・方法を提案することができる | ・新たな看護サービスの提供方式・方法を創造し、スタッフとともに実現に向けた行動をとることができる | ・医療・看護の動向や地域の状況などを踏まえ、新たな看護サービスの提供方式・方法を創造することができる | ・医療・看護の動向や地域の状況などを踏まえ、新たな看護サービスの提供方式・方法を創造し、主導することができる |
詳しくは、下記の日本看護協会Webサイト参照。
https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/guideline/nm_managementladder.pdf
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