2019/8/21
緑内障は眼の神経変性疾患で、日本人の有病率は40歳以上の5%(20人に1人)という頻度の高い疾患である。視野・視力障害を引き起こすものの、自覚症状に乏しいことや視神経障害を改善する治療がないことなどから、日本の中途失明原因の第一位となっている。
この度、奈良県立医科大学より、緑内障患者は睡眠中の血圧(夜間血圧)が上昇し、心血管イベントや死亡が生じやすい可能性があることが発表された。この研究は、奈良県立医科大学眼科学講座の吉川匡宣講師、緒方奈保子教授、同大疫学予防医学講座の佐伯圭吾教授、大林賢史准教授と共同で行われたものだ。
血圧には1日のうちで変動(生体リズム)があり、睡眠中(夜間)には血圧が下降する。睡眠や血圧などの生体内のリズム調整には、眼(特に網膜神経節細胞)への光刺激が最も重要とされ、緑内障ではこの網膜神経節細胞が障害されることから、緑内障患者では生体リズムに関連する様々な疾患が生じやすいことが知られている。
本研究では、同大学眼科へ通院中の緑内障患者109 名(平均年齢71.0歳)と地域住民対象のうち緑内障を除外したコントロール708名(平均年齢70.8歳)の24時間連続血圧データを比較した。すると、緑内障群の睡眠中の血圧は119.3mmHg、コントロール群は114.8mmHgと、緑内障患者で有意に睡眠中血圧が上昇していることが明らかとなった。また、緑内障患者では睡眠中の血圧が下降しないタイプが1.96倍多いという結果が出た。
同研究グループは、緑内障患者では年齢・肥満・糖尿病等とは独立して夜間血圧の上昇を認めたことから、心血管イベントや死亡が生じやすい可能性が示唆されたと結論を出している。
詳しくは、奈良県立医科大学Webサイトを参照
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