2019/9/4
厚生労働省が令和元年6月に公表した「認知症施策推進大綱」が波紋を呼んでいる。
日本における認知症患者数は、2012年に約462万人、軽度認知障害者数は約400万人と推計され、合わせると65歳以上の高齢者の約4人に1人が認知症またはその予備軍とされていた。2018年には認知症患者数は500万人を超えたものとされ、現在、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症と見込まれている。認知症は誰もがなりうるものであり、家族や身近な人が認知症になることなどを含め、多くの人にとって身近なものとなっている。こうした状況を踏まえて厚生労働省が発表したのが、新たな「認知症施策推進大綱」だ。2015年1月に策定された「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)の後継にあたるプランである。
本大綱の基本的な考え方は、「認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、認知症の人や家族の視点を重視しながら、「共生」と「予防」を車の両輪として施策を推進していく」というものだ。今回、新たに「予防」という観点を打ち出したことが波紋を呼ぶことになった。それは、予防の数値目標を掲げたためだ。
「共生」は、認知症の人が尊厳と希望を持って認知症とともに生きる、また、認知症があってもなくても同じ社会でともに生きるという意味であり、これは以前からの考え方のベースである。波紋を呼んだ「予防」については、国では、「認知症にならない」という意味ではないことを強調した。「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味であること強く訴えている。予防をふくめた認知症への「備え」としての取り組みに重点を置き、結果として70歳代での発症を10年間で1歳遅らせることを目指すとした。
具体的な取り組みとしては、①普及啓発・本人発信支援、②予防、③医療・ケア・介護サービス・介護者への支援、④認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援、⑤研究開発・産業促進・国際展開が挙げられている。それぞれの内容とKPI(主要業績評価指標)・目標は下記の通りである。
「①普及啓発・本人発信支援」の取り組みとしては、認知症サポーターの養成、相談先の周知、認知症の人本人からの発信支援がある。
「②予防」の取り組みとしては、認知症予防に資する可能性のある活動の推進(運動不足の改善、糖尿病や高血圧症等の生活習慣病の予防、社会参加による社会的孤立の解消や役割の保持等)、予防に関するエビデンスの収集の推進などが挙げられている。
「③医療・ケア・介護サービス・介護者への支援」の取り組みとしては、早期発見・早期対応、医療体制の整備、医療従事者等の認知症対応力向上の促進、医療・介護の手法の普及・開発、介護サービス基盤整備・介護人材確保・介護従事者の認知症対応力向上の促進、認知症の人の介護者の負担軽減の推進がある。
「④認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援」の取り組みとしては、バリアフリーのまちづくりの推進、移動手段の確保の推進、認知症に関する取組を実施している企業等の認証制度や表彰、成年後見制度の利用促進、認知症に関する様々な民間保険の推進などがある。
「⑤研究開発・産業促進・国際展開」の取り組みとしては、認知症発症や進行の仕組みの解明、予防法、診断法、治療法、リハビリテーション、介護モデル等の研究開発など、様々な病態やステージを対象に研究開発を推進、認知症の予防法やケアに関する技術・サービス・機器等の検証、評価指標の確立などがある。
詳しくは、下記の厚生労働省Webサイト参照
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000076236_00002.html
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