2019/11/1
地域包括ケア推進の動きが加速している。地域包括ケア体制を構築する上では、医療機関や職種間の連携が必須である。なかでも看護職はその中心的役割を担っているといえよう。「看看連携」とは、地域のさまざまな場で活躍する看護職同士が連携することである。それにより、他職種を含めた連携が促進され、看護の質や地域全体のケアの質向上が期待される。
このような看看連携の体制を構築するために重要なのが、看護管理者への働きかけである。そこで、厚生労働省は、2017年度のヒアリング等をもとにして作成した「病院看護管理者のための看看連携体制の構築に向けた手引き—地域包括ケアを実現するために—」を発表した。
本手引きの対象は地域医療の中核を担う病院であり、看看連携を「地域の看護職同士が、対象者の生活を支えるために、同じ目標をもって、信頼しあい、対等の立場で協働すること」と定義している。また、厚生労働省が示した「在宅医療提供体制」において病院看護職に求められる看看連携を下記のように示している。
①退院支援:
地域との入院時連携、訪問看護ステーションとの連携、施設入所者の入院に関する施設看護職との連携など
②日常の療養支援:
外来診療での重度化予防、地域の看護職との情報共有などによる連携、認定・専門看護師による地域への訪問など
③急変時の対応:
緊急入院や認知症患者などへの対応、地域内の病院機能の把握と連携など
④看取り:
終末期の症状緩和のための訪問看護や施設看護職との連携、意思決定支援の実施や関係機関との情報共有、高齢者ケアや看取りについての市民への啓発の役割なども期待
看看連携の5つのステップと実践例としては、下記が挙げられている。
■STEP1:連携体制構築の必要性を認識する
病院を地域のケアシステムの一機関ととらえ、病院内・病院外(地域)の両方の視点から現状の課題を検討することを通じて、まず看護管理者が、地域の看護職との協働の必要性や重要性を認識する。
<実践事例>
基幹病院内で看護師が行った再入院に関する研究の結果を受け、看護部長は、病院内だけでの問題解決の困難さ、病院間連携・在宅療養移行支援強化や地域単位での取り組みの必要性を認識した。
■STEP2:連携体制構築に向けて働きかける
連携体制構築に向け病院内・外の理解を得るため、患者・家族・地域住民の声や日々の看護実践、MSWや退院支援看護師などからの情報収集を通じて、現状の課題を明確化し、病院内で課題意識を共有する。
<実践事例>
看護部長が、地域の他機関や保健所とともに地域連携に向けた取り組みとして地域診断を行い、①医師・看護師の在宅療養に関する理解不足、②医療・介護の共通ツールの必要性、③市民への在宅療養に関する啓発の3つの課題が明らかになった。
■STEP3:実際に取り組みを実施する
取り組みを始めるにあたり、実際に地域の関連機関に足を運んで看護職のネットワークづくりを行うとともに、関係職種との定期的な勉強会・研修会などを通じた課題や目標の共有、共通の情報共有ツールの作成などを行う。
<実践事例>
基幹病院が事務局となり、医療・介護に関する多機関・多職種対象の研修会を企画・実施し、医師・看護師の意識改革、在宅医療体制の向上、施設での看取りの実践等が継続的に行われている。
■STEP4:連携体制を維持・拡大するための工夫
構築した連携体制の継続・拡大に向け、行政事業への移行や行政との協働、大学との協働による研究費・助成金の申請・活用などを通じた、人材・時間・場所・経費の確保を行う。
<実践事例>
保健所の事業として、職種間の共通ツールの作成・展開を行った。市民への啓発活動も実施していたが、自主事業化に伴い現在は多職種対象の研修会に焦点を当てて実施している。
■STEP5:取り組みを評価する
看看連携体制の構築後も体制の継続や課題への対応を行うために、連携事業の実施内容、参加者数やアンケート内容、費用などの把握を通した、現状の連携体制や連携事業の継続的な評価を行う。
本手引きではこうした取り組みの進め方のポイントのほか、6つの事例が紹介されている。
詳しくは、下記の厚生労働省Webサイト参照
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