2020/2/18
脳卒中後に経口栄養が不可能となり、経管栄養にならざるを得ない患者は多く、再び経口栄養にするためには摂食嚥下リハビリテーションがある。経口摂取になっても、食物や唾液、あるいは口腔内細菌は、嚥下によって腸管へと流入するため、これらが腸内細菌叢の変化に影響を及ぼす可能性がある。ただ、経口栄養がどのように腸内細菌叢に影響しているかは不明であった。
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病分野の片桐さやか・助教と高齢者歯科学分野の戸原玄・准教授の研究グループは、経口栄養の再獲得と口腔内および腸内細菌叢との関連を細菌学的に検討した。
この研究は、脳卒中の亜急性期に経管栄養となった後、摂食嚥下訓練を受けて経口摂取となった8名(この期間の患者の摂取カロリーは一定に保たれている)を対象としている。次世代シークエンサー(遺伝子配列を高速で読み出せる装置)を用いて、口腔内と腸内細菌叢の細菌種の同定、細菌種間の相関関係などを解析した結果、経口栄養を再獲得することによって口腔内・腸内細菌叢の多様性が増加し、細菌叢の組成が変化していることなどを見出した。つまり、摂食嚥下訓練は、口から食べられる機能を回復させるだけでなく、口腔内と腸内の細菌叢を変化させることが明らかになったことになる。
研究グループでは、腸内細菌叢がさまざまな疾患に影響することはすでに知られているが、この研究は経口栄養の再獲得が全身の健康の維持にも重要であることを細菌学的な観点から示した発見であり、今後の医療戦略を考えるうえで意義のある成果と言えること、そして、食べることの重要性を理解した上での摂食嚥下訓練は、今後の医療向上に役立つことが期待されると述べている。
詳しくは、下記の東京医科歯科大学Webサイト参照
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