2020/2/27
2020年度の診療報酬改定の概要が見え始めた。中央社会保険医療協議会(中医協)が2020年度診療報酬改定案を了承して加藤勝信厚生労働相に答申した、いわゆる“短冊”が示された。今回の改定では前回改定に引き続き、医療機能の分化・強化、連携の促進と同時に、医師を中心とした医療従事者の働き方改革が前面に打ち出されている。医師の働き方改革に関しては、2024年4月から医師の時間外労働に上限規制が適用される予定であり、診療報酬改定においても労働時間短縮に関する取り組みが盛り込まれている。現時点で明らかにされている今回の改定の中の看護に関連するポイントをいくつか紹介する(2020年2月20日現在)。
「重症度、医療・看護必要度」の見直し
■重症度、医療・看護必要度Ⅱ「診療実績データを用いた方法」への誘導
入院料の改定で注目されるのが、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の見直しだ。看護必要度の判定基準や評価項目を見直した上で、該当患者割合の基準値は急性期一般入院料1の重症度、医療・看護必要度Ⅰ(従来測定方法)で現行の「30%以上」から「31%以上」に、重症度、医療・看護必要度Ⅱ(診療実績データを用いた方法)で現行の「25%以上」から「29%以上」に引き上げる。その一方で、入院料4では重症度、医療・看護必要度Iを「22%以上」(現行は27%)、同Ⅱを「20%以上」(同22%)とし、入院料1~4の各間の差を現行の1%から3%に拡大する。このような改定によって、「診療実績データを用いた方法」である重症度、医療・看護必要度Ⅱへの誘導を図りたいこと、同時に、過剰といわれる「看護配置7対1以上」の入院料1から、「看護配置10対1」の入院料2以下への病床への移行の方向性が見えてくる。
■重症度、医療・看護必要度のためだけの“記録”であれば不要
重症度、医療・看護必要度で最も看護師の業務に関連するのが、「測定に係る負担の軽減」だ。B項目の評価方法を見直し、「患者の状態」と「介助の実施」に分けた評価とすることによって、ADLを含む患者の状態がより明確になるため、「評価の手引き」で求められている「根拠となる記録」が不要となる。これまで、「看護必要度のために、わざわざ“記録”をつけなければならない」という認識で現場の看護師の多忙感が高まっていたが、それを解消するのがねらいのようだ。上記の「評価の手引き」で求められている「根拠となる記録」とは、「評価においては、後日、第三者が検証を行う際に、記録から同一評価を導く根拠となる記録を残しておく必要がある」という記載である。ただ、単に記録が不要となったわけではなく、行われた看護は必ず看護記録に記載されることは必要であり、わざわざ重症度、医療・看護必要度のためだけに記録をつける必要はないということは再確認したほうがよいだろう。
看護に関する注目したい改定点
■せん妄ハイリスク患者ケア加算
看護に関連するものとしては、「せん妄ハイリスク患者ケア加算」が新規収載された。これは、一般病棟入院基本料等を算定する病棟で、入院早期にせん妄のリスク因子をスクリーニングし、ハイリスク患者に対して非薬物療法を中心としたせん妄対策を行ったときに入院中1回評価される。“非薬物療法”を中心とした、と明記されたことで、せん妄予防の看護ケアが評価されることになる。
■摂食嚥下支援加算
また、チーム医療の評価としては、これまで「経口摂取回復促進加算(摂食機能療法)」とされていたものが、「摂食嚥下支援加算」となった。摂食機能療法を算定する患者で、「摂食嚥下支援チーム」の介入によって摂食嚥下機能の回復が見込まれる患者に対して、多職種が共同して必要な指導管理を行った場合に算定できる。「摂食嚥下支援チーム」の構成員は、いずれも“専任”で“常勤”の、①医師または歯科医師、②看護師、③言語聴覚士、④薬剤師、⑤管理栄養士、⑥歯科衛生士、⑦理学療法士または作業療法士、とされる。②の看護師は、「摂食嚥下機能障害を有する患者の看護に従事した経験を5年以上有する看護師であって、摂食嚥下障害看護に係る適切な研修を修了した看護師」とされている。
その他の改定で注目したいところ
その他の主な点は以下のようなものである。排尿指導料の見直しによって「排尿自立支援加算」が新規収載され、週1回12回まで算定できるようになったことと同時に、「外来排尿自立指導料」が新設されたこと、「在宅患者訪問褥瘡管理指導料」の見直しが行われ、初回カンファレンスの実施と在宅褥瘡診療計画の策定が評価されるとともに管理栄養士の雇用形態が変わったこと、「認知症ケア加算」の見直しが行われ、「認知症ケア加算1、2、3」の3段階になったことだ。これらの詳細については今後順次紹介していく。
詳しくは、下記の厚生労働省Webサイト参照
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