2020/3/4
これまでなかなか表に出てこなかったが深刻な問題の1つに“高齢者虐待”がある。この度、厚生労働省から、平成30年度の高齢者虐待の調査結果が発表された。これは、高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)に基づき、全国1,741市町村および47都道府県で実施されたものだ。
高齢者虐待の件数は、介護施設の職員によるものが621件で、前年度より111件(21.8%)増加した。家族や親族などによるものは1万7,249件で、前年度より171件(1.0%)増加した。
また、市町村への相談・通報件数は、介護施設の職員によるものが2,187件で、前年度より289件(15.2%)増加し、家族や親族などによるものは3万2,231件で、前年度より2,191件(7.3%)増加した。
■介護施設の職員による虐待
介護施設の職員による虐待の発生要因(複数回答)は、「教育・知識・介護技術等に関する問題」が358件(58.0%)と最も多く、次いで「職員のストレスや感情コントロールの問題」が152件(24.6%)、「倫理観や理念の欠如」「人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ」がそれぞれ66件(10.7%)であった。
介護施設の職員から虐待を受けた927人のうち、「女性」が688人(74.2%)を占め、年齢は「85~89歳」が230人(24.8%)、「90~94歳」が197人(21.3%)であった。
虐待の内容(複数回答)は、「身体的虐待」が533人(57.5%)で最も多く、「心理的虐待」の251人(27.1%)、「介護等放棄」の178人(19.2%)と続いている。虐待の程度(深刻度)では、5段階評価で最も軽い「1-生命・身体・生活への影響や本人意思の無視等」が560人(60.4%)であるが、最も重い「5-生命・身体・生活に関する重大な危険」は27人(2.9%)であった。
虐待者である介護施設の職員723人の年齢は、「30~39歳」が142人(19.6%)、「30歳未満」が139人(19.2%)、「40~49歳」が115人(15.9%)、「50~59歳」が101人(14.0%)であった。
虐待者の性別は、「男性」が392人(54.2%)、「女性」が294人(40.7%)であった。介護従事者全体に占める男性の割合が20.6%であるのに対し、虐待者に占める男性の割合が54.2%であることを踏まえると、虐待者は相対的に男性の割合が高い。
施設・事業所別に見ると、「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」が217件(34.9%)と最も多く、「有料老人ホーム」が143件(23.0%)、「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」が88件(14.2%)、「介護老人保健施設」が50件(8.1%)であった。
■家族や親族などによる虐待
家族や親族などによる虐待の発生要因(複数回答)は、「虐待者の介護疲れ・介護ストレス」が2,447件(25.4%)で最も多く、次いで「虐待者の障害・疾病」の1,757件(18.2%)であった。
家族や親族などから虐待を受けた1万7,686人のうち、「女性」が1万3,488人(76.3%)を占め、年齢は「80~84歳」が4,307人(24.4%)、「75~79歳」が3,634人(20.5%)となっていた。
虐待の内容(複数回答)は、「身体的虐待」が1万1,987人(67.8%)で最も多く、「心理的虐待」が6,992人(39.5%)、「介護等放棄」が3,521人(19.9%)、「経済的虐待」が3,109人(17.6%)であった。
虐待の程度(深刻度)の割合は、5段階評価で「3-生命・身体・生活に著しい影響」が6,113人(34.6%)と最も多く、次いで「1-生命・身体・生活への影響や本人意思の無視等」が5,190人(29.3%)であった。一方、最も重い「5-生命・身体・生活に関する重大な危険」は1,385人(7.8%)であった。
虐待者は「息子」が7,472 人(39.9%)と最も多く、「夫」が4,047 人(21.6%)、「娘」が3,316 人(17.7%)という結果であった。
なお、市町村における体制整備については、「高齢者虐待の対応の窓口となる部局の住民への周知」が1,471市町村(84.5%)で実施されている。一方、高齢者虐待防止ネットワークの構築のうち、介護保険サービス事業者等からなる「保健医療福祉サービス介入支援ネットワーク」の構築への取組が877市町村(50.4%)、行政機関・法律関係者・医療機関等からなる「関係専門機関介入支援ネットワーク」の構築への取組が872市町村(50.1%)と半数程度にとどまっている。
詳しくは、下記の厚生労働省Webサイト参照
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