2020/3/10
公益社団法人日本看護協会では、重点政策・事業の1つ「看護職の役割拡大の推進と人材育成」として、①新たな認定看護師制度の推進、②特定行為に係る研修制度の活用の推進、③ナース・プラクティショナー(仮称)制度の構築の3本柱をかかげている。「新たな認定看護師制度の推進」、「特定行為に係る研修制度の活用の推進」としては、認定看護師制度を基盤に特定行為研修を組み込んだ新たな教育や役割に発展させ認定看護師制度の再構築に取り組み、特定行為研修の推進に向けて協会をあげて活動を始動している。
「ナース・プラクティショナー(仮称)制度の構築」においては、現行法では認められていない“新たな裁量権”を持つ“ナース・プラクティショナー(仮称)”制度の創設に向けてアクションを起こしている。2040年までに創設を目指す本制度について、月刊『看護』2020年2月号で井本寛子・日本看護協会常任理事が解説している記事をもとに、その概要を紹介する。
同協会が制度の創設を目指す“2040年”というのは、わが国で少子化・高齢化が急速に進み労働人口が減少する一方で、医療ニーズがピークに達すると目される時期である。2040年に国が目指す医療提供体制は、「どこにいても同じ医療を」「医師・医療従事者の働き方改革による安全で効率的かつ質の高い医療」とされている。協会では、2015年度から、地域の医療ニーズや、今後さらに少子高齢多死社会が進む状況において、看護師に期待される役割などについて情報収集を行ってきた。その結果、現行の「医師の指示のもとでの診療の補助」の枠を越えない特定行為研修制度では対応できない現場のニーズがあること、特に医療資源が限られた地域で、住民・利用者の療養生活を支えるために、看護師が現行法では認められていない新たな裁量権を持ち、さらに役割を担っていくことへのニーズが高いことがわかったという。そのニーズに応えるのが、“ナース・プラクティショナー(仮称)”とされている。特定行為研修を修了した看護師ができるのは、あくまでも「医師の指示のもと(つまり包括的な手順書)での診療の補助」行為であって、そこには制限があることを強調している。
諸外国に目を転じてみると、2017年にOECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)が出したワーキング・ペーパーNo.98“Nurses in advanced roles in Primary care”では、各国の看護師の役割拡大と改革についての分析が示されているという。それによると、①伝統的な看護職と医師との境界における高度な看護実践の拡大、②慢性症状の管理を主としたさまざまな新しい看護師の役割の導入、③必要なスキルとコンピテンシーを獲得するための看護師教育の充実、などの傾向があるとされている。
こうしたさまざまな動向を踏まえて、協会は、「看護が対象者のニーズに応え、その人らしい生活や人生を支えていくことを目的としている以上、時代とともに役割が変化することは当然といえる」としながら「役割が変化・拡大していく際には、看護とは何か、看護師とは何をする人かということを忘れてはならないと考える」という“看護として立ち位置”も強調する。そして、「従来、医師が担ってきた診断や薬剤処方といった治療の一部も看護を提供するための手段として活用していくという考え方もあるのでは」と提言している。つまり、看護の基盤をもちながら、医師の指示を受けずに一定レベルの診断や治療などを行う、米国等のような「ナース・プラクティショナー」の資格を、日本においても新たに創設し、急増する医療ニーズに応えていくことが必要であり、それが“ナース・プラクティショナー(仮称)”であると考えているようだ。
国の方針として、“特定行為研修を修了した看護師”が急速に増えていく状況のなか、日本看護協会認定の認定看護師、専門看護師、さらにNP教育課程修了者など、さまざま看護のスペシャリストにより、専門性も高い看護が提供されていくことになる。そのような中で新たに創設が検討されている“ナース・プラクティショナー(仮称)”は、「看護師免許に加え、ナース・プラクティショナー(仮称)の国の免許・資格を有し、看護師には認められていない診断や治療も行うことができる」とされている。
詳しくは、下記の日本看護協会Webサイト参照
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