2020/5/13
一般社団法人日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は、2015年10月から始まった医療事故調査制度に基づいて、医療の安全を確保し医療事故の再発防止を図ることを目的に活動している。
制度開始となった2015年10月~2019年4月末までに、同センターに報告された医療事故の院内調査結果報告書は1,004件に上る。そのうちの12事例にあたるのが、大腸内視鏡検査等の前処置にかかわる死亡事故であった。そのうち、前処置として下剤を服用後に死亡した例は3例、腸管洗浄剤を服用後に死亡した例は9件であった。同センターは、これらの事例を分析し、「大腸内視鏡検査等の前処置に係る死亡事例の分析」をまとめ、公表した。このなかでは、リスクの認識、適応、観察と判断の観点から、計5つの提言を示している。以下にその概要を記す。
■リスクの認識
提言1:大腸内視鏡検査等の前処置(下剤・腸管洗浄剤の服用)によって、腸閉塞をはじめとした合併症が惹起され、検査前に死亡するリスクがあることを認識する
■適応
提言2:事前に腸管の通過障害の有無を評価し、適応と前処置の方法を慎重に判断する
提言3:遠位大腸狭窄が疑われる場合、事前検査で状態を十分に確認し、代替処置を検討する
■観察と対応
提言4:下剤服用後に反応便がない場合、腸管の通過障害を疑う
提言5:腹部症状出現時は、まず服用を中断してすみやかに診察を行い、腸閉塞・腸管穿孔の有無を診断する
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大腸がん罹患率の上昇に伴い大腸内視鏡検査の件数も増加の一途を辿っている(年間約500万件実施)。さらに、機器の進歩や医師の技術向上も相まって、高齢者への検査も増えてきた。
本提言は、検査を直接実施する医療従事者のみならず、前処置の実施や検査適応の判断に携わる医師、看護師、その他医療従事者すべてが押さえておきたい内容だ。
詳しくは、下記の日本医療安全調査機構Webサイト参照
https://www.medsafe.or.jp/uploads/uploads/files/teigen-10.pdf
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