2020/9/15
“重篤な腎障害のある患者”に対する静脈栄養製剤の使用は禁忌とされている。その理由は、「水分や電解質の過剰投与に陥りやすく、症状悪化のおそれがある」および「アミノ酸の代謝産物である尿素等が滞留し、症状悪化のおそれがある」などである。
しかし、透析や血液ろ過を行っている患者では、水分や電解質、尿毒素物質は透析・血液ろ過の際に除去されるため、一般用静脈栄養製剤の投与も可能と考えられた。これまで、禁忌対象である“重篤な腎障害のある患者”に、この“透析・血液ろ過を受けている患者”が含まれているか否かは明確になっていなかったことから、医療現場では解釈が定まらず混乱が生じていた。
2020年6月25日、一般用静脈栄養製剤の添付文書の「使用上の注意」が改訂され、投与禁忌とされている“重篤な腎障害のある患者”から、“透析又は血液ろ過を実施している患者を除く”ことが明記された。日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)では、今回の添付文書の改訂に当たっての経緯および注意事項について、ホームページでまとめている。
透析・血液ろ過を受けている患者への投与が認められたことにより、健常人よりも積極的なタンパク質摂取が必要とされている透析期の患者に対して、標準製剤の高濃度アミノ酸(一般用製剤)が選択可能となり、アミノ酸濃度の低い腎不全用製剤よりも液量当たりのアミノ酸補給量を増加でき、水分制限も含めてより適した栄養管理ができるようになった。キット製剤においても同様に禁忌除外となったことから、混合業務負担の減少や感染制御の観点からもメリットが期待される。
なお、透析などの腎代替療法では、アミノ酸やタンパク質の喪失はその種類や強度によってさまざまであるため、喪失量を考慮して投与量を決定する必要がある。また、静脈栄養を必要とする透析患者では、低栄養状態もみられ、低カリウム・低リン血症に陥っていることもあるため、必要に応じて電解質の補給などが必要になる場合がある。栄養製剤中に含まれる各種電解質の管理には、十分な配慮が必要となる。
JSPENのガイダンスでは、透析・血液ろ過を受けている患者に一般静脈栄養製剤(アミノ酸含有輸液製剤)を使用する際は、各製剤の配合成分および濃度に留意し、腎代替療法の種類や強度、頻度・間隔、症例の病態や重症度、食事及び経腸栄養等の併用状況などを考慮して、適切な間隔で各栄養素の過不足について評価するとともに、必要に応じて調節や補正を行うことが求められる、と述べられている。
詳しくは、下記の日本臨床栄養代謝学会Webサイト参照
「一般用静脈栄養製剤の添付文書の『使用上の注意」の改訂とそれに関連する注意事項の公開について」
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