2021/1/19
少子高齢化をはじめとした社会情勢を受け、療養の場を病院から地域・在宅へと移行する流れが進んでいる。2018年には、医療を必要とする要介護者が長期療養・生活を行うための、「日常的な医学管理」や「看取り・ターミナルケア」等の医療機能と「生活施設」の機能を兼ね備えた新たな介護保険施設として、介護医療院が創設された。2024年3月末に廃止が予定されている(*1)従来の介護療養型施設(介護療養病床)に代わるものとして、国は「移行定着支援加算」(*2)等の支援策もとりながら介護医療院への転換を推し進めている。
介護医療院は、Ⅰ型とⅡ型に分けられている。Ⅰ型は主に重篤な身体疾患を有する者および身体合併症を有する認知症高齢者等が利用者となり、医師や看護師配置等の施設基準は介護療養病床相当のものが求められる。Ⅱ型は、Ⅰ型と比較して比較的容態の安定した者を対象としており、施設基準は老健施設相当以上となっている。
2020年9月時点の介護医療院開設状況は、全国で539施設、33,820床となっている(下図)。このうちの多くを占めているのが、介護療養病床からの転換である。特にⅠ型は、その85.4%が介護療養病床からの転換となっている。一方Ⅱ型は、介護療養型老人保健施設からの転換の割合が多い(45.7%)。創設から2年あまりが経過し徐々に増加のペースは加速しており、自治体への理解の広まりや、申請手続き等のスムーズ化が一因ではないかとみられている。
介護医療院開設状況(2020年9月時点)
日本介護医療院協会2020年調査結果(2020年12月1日,日本慢性期医療協会定例記者会見資料より)
日本介護医療院協会が会員施設に対して行ったアンケート調査によると、介護医療院を開設してよかったこととして、助成金や加算の取得、収益増などいった経営的な側面や、利用者の居場所確保などが挙げられており、約6割の施設が「介護医療院の開設は収益上よかった」、また約7割の施設が「介護医療院の開設は総合的によかった」と回答していた。一方で、看護・介護人材の確保不足や生活施設としての環境整備などについては、苦労している事柄として挙げられていた。
2021年度には介護報酬改定も迫っており、移行定着支援加算延長への要望や、看取りへの加算の要望、リハビリテーション減算までの期間の延長等の要望が寄せられている。医療的なケアと生活の場としての両方を兼ね備えた介護医療院は、今後、地域包括ケアが進むなかでますます必要となると考えられ、改定に向けての動きも注目される。
*1:2020年12月現在の経過措置期限
*2:2020年12月現在、2021年3月末で算定終了予定
詳しくは、下記の日本慢性期医療協会Webサイト参照
定例記者会見(2020年12月1日)
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