2021/2/3
2021年1月以降、COVID-19の新規感染者数、重症者数の報告が過去最多となる日があるなど、いまだ厳しい状況といえるが、COVID-19の蔓延を防ぐ対策として注目を集めるワクチンについて、わが国の動きが少しずつ見えてきた。
2020年12月2日に予防接種法改正案が成立し、接種にかかる費用の無償化や、健康被害が生じた場合の救済措置、製薬会社に生じる損害賠償を国が負担することなどが明らかになった。また12月18日には、アメリカの大手製薬会社ファイザー株式会社が、厚生労働省にワクチンの承認申請を行った。現在、厚生労働省でワクチンの有効性と安全性が審査されており、承認されれば2021年春頃にも接種が開始される見込みだ。
COVID-19ワクチン接種までの道のりがようやく見えつつある中、日本感染症学会から「COVID-19ワクチンに関する提言」が公表された。この提言では、ワクチンの開発状況、作用機序、有効性と安全性、国内での接種の方向性として優先接種対象者や予防接種法の改正などについてまとめられている。臨床試験の結果なども含め、重要な情報がわかりやすく整理されているので、ぜひ一読されたい。
本提言は、個人が接種を検討する際の資料になるとともに、医療従事者として接種に悩む人への情報提供や、接種が開始されたときの留意点の把握にも役立つ内容となっている。
ここでは、本提言の中で、国内での接種体制の確保で指摘されている内容をいつくかご紹介する。
まず、医療関係者の接種は、所属する医療機関で行われることになるが、その際、接種人数の限定と、段階的な実施への配慮が必要であるという。これは、ワクチンの臨床試験での有害事象の報告を鑑み、接種後数日間は出勤できない職員が一定の割合でみられることを想定するためである。
また、高齢者や基礎疾患のある人の接種は、市町村に設置された会場で集団接種が行われる可能性があるが、この方法での接種は、近年では実施されていないため、実施体制の確認と、特にアナフィラキシーへの緊急対応ができる薬剤の準備など、医療体制の整備が不可欠とのことだ。
さらに、COVID-19ワクチンは、筋肉内注射で投与される。あらためて筋肉内注射の手技について、接種医へ周知する、また、血管迷走神経反射による失神の発生なども想定し、接種後30分間の健康観察ができる体制や発生したときに臥床するベッドの準備といった事前準備も必要であるという。
提言の最後で、本学会は、国民一人一人がその利益とリスクを正しく評価し、接種の必要性を自分で判断することが必要とし、そのための正しい情報を適切な発信源から得ることが重要であるとしている。医療従事者は、そのための情報発信とリスクコミュニケーションに心がける必要があると述べている。
なお、この提言は、COVID-19の国内外における状況をふまえ、随時更新される予定だ。
詳しくは、下記の日本感染症学会Webサイト参照
COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)(2020年12月28日公表)
https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/2012_covid_vaccine.pdf
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