2021/2/10
2021年1月現在、新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)の急速な感染拡大に伴い、医療体制のひっ迫が深刻さを増している。COVID-19患者の受診や入院が困難なだけにとどまらず、一般の救急医療体制も大きな影響を受けている。
日本脳卒中学会は、COVID-19による脳卒中救急医療への影響について、2020年12月の現状調査に基づいた声明(*1)を発表している。
この調査によると、一次脳卒中センター714施設(学会認定974施設の73.3%)のうち、救急応需を通常通り行えている施設は81.7%に止まり、救急受け入れの停止など何らかの診療制限がかかっている施設が18.3%に上った(2020年12月14日時点)。COVID-19感染拡大の継続はさらなる脳卒中医療のひっ迫を招き、救急医療の崩壊につながることが危惧されている。
さらに、現場の医師からは、搬送されてくる際にはすでに基礎疾患が重症化しているケースが増えたとの声も聞こえてくる。民間会社による調査(*2)では、COVID-19への不安による受診控えが二人に一人の割合に上るという結果が出ており、患者本人が病状の悪化に気づかず、ある日突然発症して重篤な状態に陥るリスクが懸念されている。
脳卒中(脳血管疾患)は、日本人の死亡原因の第4位(2019年人口動態統計より)となっており、発症時の早期対処が救命のカギとなる。医療機関の救急受け入れに制限が出てくるなかで、発症の徴候を早期に見抜いて対応へとつなげる重要性は、ますます増している。病棟の患者や訪問先の患者の「いつもと違う」状態に気づくことができるよう、ナースは脳卒中発症初期の症状を再度確認しておきたいものである。
脳卒中のサインとして、「ACT-FAST」は、患者に接する際に意識しておくとよいだろう。
症状 | 簡易的な検査の例 | |
---|---|---|
Face | 表情にゆがみがある | 歯を見せて笑ってもらう、「パタカ」と言ってもらうなどで麻痺が出ているかどうかをみる |
Arm | 片腕に力が入らない | 手のひらを上にした状態で両腕を水平にあげてキープできるかをみる |
Speech | 言葉がうまく出ない | 会話のなかでの言い間違いや、言っていることが理解できないなどの状態が起こっているかをみる |
Time→異常がみられたら、迅速にナースコールや救急車を手配。
また、突然の視野の異常やふらつき、激しい頭痛、突然の意識障害、なども代表的なサインである。あわせて、「なんとなく肩がこる」「どこか気持ちが悪い」といった患者の訴えにも、脳卒中の初期症状が隠れていることも覚えておきたい。
高血圧や動脈硬化など、脳卒中リスクの高い患者と接する際は特にこれらのサインに注意して、必要に応じ迅速に対応を行うことが重要である。
引用文献
(*1)一般社団法人日本脳卒中学会
「COVID-19 による脳卒中救急医療への影響について 2020年12月の現状調査に基づく声明(2021年1月5日)」
https://www.jsts.gr.jp/news/pdf/20210105_covid.pdf
(*2)ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社
「新型コロナウイルス感染症への不安による受診控えは二人に一人(2020年11月13日)」
【関連ページ】
●ディアケア プレミアム
15分で学べる!ディアケアプレミアム ポケットセミナー
「脳のしくみを知って脳卒中看護に強くなる!」
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat01/theme007/index.html
×close
©DEARCARE Co., Ltd.