2021/3/22
日本医療機能評価機構(PMDA)の「医療事故情報収集等事業 医療安全情報」によると、咀嚼・嚥下機能が低下した患者に適した食種を選択(オーダ)したにもかかわらず、想定していなかった食物が提供されたために、患者が窒息した事例が5件報告されているという(集計期間:2016年1月1日~2020年11月30日)。
報告された事例では、オーダされた食種は「全粥食」や「軟菜食」、「低残渣食」などで、提供された食物はいずれも「パン」であった。
パンは、唾液を吸収しやすく、口腔内への付着性が増加する食物である。また、「もち」や「米飯」に続く、窒息の原因となることが多い食物でもある(※)。嚥下機能の低下した患者に、リスクの高い食物が提供されるに至った本事例の背景には、システムの規定値の問題や医師の認識不足があるようだ。
例えば、システム面では、“全粥食でオーダしても、「パン禁止」と入力しないと、献立によりパンが提供されることがあった”、“軟菜食の朝食は、パンに設定されていた”という原因が挙げられている。また、オーダした医師側においては、こうしたシステムの規定値を把握していなかったという。
事例が発生した医療機関の取り組みとして、以下が紹介されている。
●咀嚼・嚥下機能が低下した患者にオーダする食種では原則としてパンを提供しない設定にシステムを変更する。
●咀嚼・嚥下機能が低下した患者にパンを提供することによる窒息の危険性を院内に周知する。
さらに、取り組みのポイントは以下のとおりである。
●全粥食・軟菜食などのオーダでパンが提供される設定は、窒息のリスクを伴うことを認識する。
いま一度、患者に適した食種や食形態が確実に提供できるように、自施設のシステムの再チェックや患者の食事摂取状況の情報共有の見直しが必要かもしれない。
(※)平成19年度 厚生労働科学特別研究事業 「食品による窒息の現状把握と原因分析」報告書
詳しくは、下記の日本医療機能評価機構Webサイト参照
「咀嚼・嚥下機能が低下した患者に合わない食物の提供」
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