2021/4/6
日本呼吸器学会は2021年3月2日、COVID-19第3波流行期におけるNPPV(非侵襲的陽圧換気)および高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC、ハイフローセラピー)の使用についてのアンケート結果を発表した。2回目の調査となる今回の回答期間は2021年2月3日~24日、139施設分の回答をもとにまとめられた。
質問は、COVID-19症例(疑い例を含む)に対するNPPV(CPAPを除くBilevel PAP)、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)、HFNCの使用の有無、また使用した各呼吸管理法の治療手段としての有効性、使用時の感染対策の内容、医療者への感染事例の有無、使用時の注意事項等である。
アンケート結果によると、NPPV(Bilevel PAP)、CPAP、HFNCのうち、COVID-19症例に対して最も多く使用されたのは、HFNC(68施設/139施設、49%)であった。NPPVは18施設/139施設(13%)、CPAPは6施設/137施設(4%)であり、圧倒的にHFNCが選択されていた。
日本呼吸器学会が2020年6月に行った1回目の調査では、HFNCを使用した施設は、回答156施設中18施設(12%)であったことを考えると、使用を選択する施設が多くなったことがわかる。
また、HFNCを使用した68施設のうち、58施設(85%)が、治療手段として有効な印象があったと回答した。
HFNCは呼吸不全の患者に対する有効な治療手段ではあるが、エアロゾルを発生させるため、ウイルス飛散による院内感染が危惧されている。COVID-19 の治療においては原則使用しないとする指針もあるが、その一方で、海外のガイドライン等では推奨するものもあり、現場では適用の判断が難しい状況にある。
この状況を受け、日本呼吸器学会では、2020年4月に「COVID-19 肺炎に対する HFNC の使用について」を発表し、HFNCの適用の考え方として以下の2案を提言している。
A. 通常の酸素吸入(ECMOnet 指針:鼻カニュラもしくはフェイスマスク 5 L/分を上限)で酸素化が維持できなければ挿管人工呼吸を検討する。挿管できない理由がある時のみ HFNC を行う。
B. 通常の酸素吸入(上記)で酸素化が維持できなければまず HFNC を行う。それでも維持できないときに挿管を行う。
今回のアンケート結果ではHFNCを使用する施設が増えており、各施設がHFNCのメリット、デメリットを考慮し、感染対策を十分に行ったうえで採用に踏み切っていることが推測される。
なお、本提言の中で提示されたHFNCを考慮できる条件は以下のとおり。
● 陰圧個室管理もしくは全体がレッドゾーンとなった病棟
● 医療者が十分な個人防護具(ゴーグル、N95マスク、ガウン、手袋)を装着する
● 医療従事者がHFNCの使用に習熟している(カニュラ側部からのリークがないよう適切に装着させられる)
● 医療従事者が同室内にいるときには咳嗽に備えてサージカルマスクを患者に着用させる
アンケート結果では、NPPV、CPAP、HFNC使用時の感染対策として、N95マスク+ゴーグル、フェイスシールド、キャップ、ガウン、手袋が使用されており、医療者への感染事例(もしくはその疑い)の有無については、「なかった」とする施設が多く、その割合は、HFNCでは94%、CPAPでは100%、NPPVでは87%であった。
また、使用時に注意していることとしては、陰圧個室での管理とN95マスクの着用が共通して挙げられており、特にHFNCにおいては、患者へのサージカルマスク着用など、日本呼吸器学会の提言に準じた対応がとられていることがわかった。
アンケート結果の詳細、および「COVID-19 肺炎に対する HFNC の使用について」は以下を参照されたい。
詳しくは、下記の日本呼吸器学会Webサイト参照
【呼吸管理学術部会】COVID-19 第3波流行期におけるNPPVおよび高流量鼻カニュラ酸素療法(ハイフローセラピー)の使用についてのアンケート結果
https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/assemblies/RC_covid19_202102.pdf
COVID-19 肺炎に対する HFNC の使用について
https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/information/20200424_COVID_HFNC.pdf
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