2021/5/18
日本老年看護学会が、認知症看護認定看護師の活動実態調査を行い、その結果を2021年4月2日同学会のホームページに掲載した。「2019年度認知症看護認定看護師の活動実態調査報告」は、(その1)と(その2)からなり、(その1)は日本老年看護学会誌(第25巻第2号)にすでに掲載されている。ここでは、(その1)をもとに、調査結果の概要を紹介する。
本調査の調査期間は2019年12月~2020年1月、2019年9月時点の認知症看護認定看護師1,141人を対象に行われた(*1)。回答数は645人、回収率は56.3%。約9割が医療機関で働く看護師である。
まず、「現在の仕事での認定看護師資格の活用」をたずねる項目では、「常に活かしている」と回答した334人に対して、「ほとんど活かせない」と回答した者が26人いた。「資格を活かせていない理由」としては、「活動が病院から認められていない」や「他の業務が主」との回答が多かった。
また、「認知症認定看護師としての活動を実践報告・事例報告としてまとめたこと」があるかをたずねた項目では、「ある」と回答した者は421人、「ない」と回答した者は221人であった。「活動を報告したことがない理由」としては「資格を取得したばかり」と回答する者が最も多かったが、「業務が多忙で時間がない」、「報告の機会がない」、「まとめ方がわからない・不安」といった回答も多かった。
医療機関に所属する者に「認知症ケア加算」の状況をたずねたところ、「加算1取得」は362人、「加算2取得」は138人であった。「精神科リエゾンチーム」の取得は少なく、81人であった。また、「認知症看護に関する外来」を「実施している」と回答したのは127人で、そのうち25人が「主たる業務」として関与しており、66人が「業務の一部」として関与し、外来が開設されていても「関与していない」と回答した者が31人いた。
活動状況をみると、自身が所属する機関で「スタッフの認知症看護の質を高めるための教育」を担う者が多く、また一般市民や他の医療機関、職種を対象とした研修会の講師を担当する者が多かった。職場だけでなく、地域においても教育的役割を果たしていることが示された。
「認知症看護認定看護師としての活動が成果をあげたと感じたこと」の質問に対しては、「身体拘束の低減」と回答した者が多く、79人だった。他に「スタッフの変化」として患者への対応力、アセスメントの変化、知識の増加・定着、「ケア対象者の変化」として症状の改善や問題の解決、「新規事業」として院内デイなど、さまざまな観点から多くの成果が挙げられた。
同学会では、こうした認知症看護認定看護師の活動状況や成果の内容を受けて、以下のような方向性の支援が学会としてできるのではないかと挙げている。
認知症看護認定看護師の日々の活動が、同学会のこうした支援と結びつき、さらなる活躍の推進、ひいてはケア対象者のQOLの向上につながることが期待される。
(*1) 2020年12月現在の認知症看護認定看護師数は、1,878人。
日本看護協会: 分野別都道府県別登録者数, 2020.
https://nintei.nurse.or.jp/nursing/wp-content/uploads/2021/01/17cn_ed202012.pdf
詳しくは、下記の日本老年看護学会Webサイト参照
2019年度認知症看護認定看護師の活動実態調査報告(2021年4月2日公表)
「2019年度認知症看護認定看護師の活動実態調査報告(その1)」
「2019年度認知症看護認定看護師の活動実態調査報告(その2):学会への要望について」
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