2021/6/16
日本医療機能評価機構による「医療事故情報収集等事業 医療安全情報No.174」(2021年5月公表)は、経腸栄養とインスリン投与に関連するもので、「インスリン投与後、経腸栄養剤が注入されておらず、患者が低血糖をきたした事例」が、2017年1月1日から2021年3月31日までの間に、6件も報告されているという。
「医療安全情報No.174」で取りあげられた事例は次の2つである。
●事例1●
看護師は、「ノボラピッド注」22単位を患者に皮下注射した後、経腸栄養剤の滴下を開始した。1時間30分後、シーツに経腸栄養剤が漏れており、接続部を確認すると、経腸栄養剤のルートを経鼻栄養チューブに接続していなかったことに気付いた。患者の血糖値が低下しており、20%ブドウ糖液を投与した。
●事例2●
看護師Aが患者の血糖測定を行い、看護師Bが「ノボラピッド注」10単位を皮下注射した。
その後、看護師Aは経腸栄養剤の注入を忘れた。3時間後、主治医の回診時に患者の意識レベルが低下しており、血液検査とCT検査を行った。血糖値が11mg/dLであり、経腸栄養剤が注入されていなかったことが判明し、20%ブドウ糖液と経腸栄養剤を投与した。
事例が発生した医療機関の取り組みとしては以下が示された。
・経腸栄養剤のルートを経鼻栄養チューブなどに接続したことを確認後に滴下を開始する。
・各患者へのインスリンと経腸栄養剤の投与について看護師間で情報共有する。
いずれの事例も、「ルートの未接続」や「開始忘れ」といった、つい起こりがちな事象が背景にある。指差し呼称など、確認を重ね1つ1つの業務を確実に行うことはもちろん大切であるが、栄養剤投与時は頻回に訪室し、注入状況を確認するなど、アクシデントが起こったとしても早期に対応・処置できるような安全対策の構築が必要であろう。
詳しくは、下記の日本医療機能評価機構Webサイト参照
インスリン投与後の経腸栄養剤の未注入
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