2021/9/15
わが国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による嗅覚障害や味覚障害について、日本耳鼻咽喉科学会と金沢医科大学の研究グループが、その発生頻度や予後に関する調査結果を報告した。
COVID-19による嗅覚障害、味覚障害は、発熱や咳などの症状がなくても、先行して自覚されるケースがあり、感染早期の見逃せない症状として広く知られている。海外では発生頻度など多数の報告がなされているが、わが国の実態把握についてはこれまで十分に進められてこなかった。
そこで、日本耳鼻咽喉科学会と金沢医科大学の研究グループが、わが国におけるCOVID-19による嗅覚、味覚障害の発生頻度やその特徴、また症状の持続期間や予後の把握を目的に、COVID-19患者を対象に実態調査を行った。
調査期間は2021年2~5月で、調査対象は病院やホテルで療養中の20~59歳のCOVID-19患者である。調査方法は、症状に関するアンケートと嗅覚、味覚検査を患者自身に実施してもらい、インターネットで回答を得るものである。そして、アンケート回答者には、発症1か月後にメールで2回目のアンケート回答と嗅覚、味覚検査実施の依頼を送付した。アンケート回答者は251名、そのうち検査実施者は119名であった。
その結果、全体の37%に嗅覚障害と味覚障害の両方が認められ、嗅覚障害のみは20%、味覚障害のみは4%であった。また、嗅覚障害を自覚する例の多くが、嗅覚検査でも正常値以下を示した。一方で、味覚障害を自覚する例の多くの場合、味覚検査は正常であったという。このことから、同グループでは、味覚障害を訴える患者の多くは風味障害である可能性が高いと示唆している。男女比率でみると嗅覚障害、味覚障害ともに女性の頻度が高く、加齢とともに頻度は減少したという。
障害の程度について、嗅覚障害では59%、味覚障害では37%が「全くしない」と回答したが、速やかに回復する症例も認められたとのこと。また、調査時に嗅覚障害、味覚障害ありと回答した患者のうち、1か月後の調査では、それぞれ嗅覚障害ありでは60%、味覚障害ありでは84%が改善を示し、この結果は海外の報告とほぼ一致するという。嗅覚障害、味覚障害はCOVID-19の治癒に伴い、大凡の人で早急に消失するものと推測されている。
同グループでは、引き続き、3か月後、6か月後の改善率をアンケートシステムで追跡調査を行うとともに、後遺障害に対する治療方法も検討する予定であるという。そして、その結果は日本耳鼻咽喉科学会で報告される予定だ。
調査結果の中で、障害によるQOLへの影響も挙げられており、「飲食が楽しめなくなった」といった食に関することで嗅覚障害、味覚障害と強い相関があることも指摘されている。食欲の低下による栄養障害の発生も想定され、こういった調査によって障害の実態が明らかになるとともに、治療に向けた情報が蓄積されることを期待したい。
詳 しくは、下記の日本耳鼻咽喉科学会ホームページ参照
「新型コロナウイルス感染症による嗅覚、味覚障害の機序と疫学、予後の解明に資する研究成果の発表」
http://www.jibika.or.jp/media/pressrelease/2107_covid-19.html
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