2021/11/17
地域包括ケアの推進に伴い、療養・看取りの場が病院から在宅へと移行しつつある。ターミナル期を自宅で過ごしたいと考える患者・家族もみられる一方で、在宅介護における介護者への負担増は課題の一つである。介護者にかかる負担としては、時間的負担や経済的負担などさまざまな負担要因があるものの、なかでもどのような要因が介護者の最も大きな負担になっているかは、これまでほとんど検討されてこなかった。
このような背景を受け、大阪大学の研究グループでは、在宅ホスピス・緩和ケアを受けて亡くなったがん患者の介護者を対象にしたアンケート調査(2014~2018年1月に実施、有効回答数342件)の結果を用い、時間的、経済的、心理的、肉体的な負担などさまざまな要因のうち、どのような負担要因が最も大きな負担になっているのかを明らかにした。
アンケート結果から、「介護のために自分の時間が十分に取れない」「介護のために自由に外出できない」といった、時間的負担がもっとも高いことが明らかになった。さらに、患者の特徴としては「要介護度が中程度(要介護2-3)」、介護者の特徴としては「55歳未満の若年介護者」で、このような負担を感じる割合が高いこともわかった。
時間的負担の軽減にはさまざまな社会資源の活用が有効である一方、現状の介護保険制度では、要介護度が高い患者でより多くの介護サービスを利用できるしくみとなっており、必要な状況の患者・家族に十分なサービス提供が行き届いていないケースもみられる。特に、若年介護者で時間的負担が重いという結果からは、働きながら親の介護を行う世代への支援が十分ではない可能性も示唆された。
今後は在宅で過ごす要介護者がますます増加することが見込まれており、研究グループでは、増加する要介護者と介護を担う就労世代である若年の介護者を社会全体で支えるしくみづくりの再構築が望まれる、と結んでいる。
訪問看護やデイケア等で在宅療養中の患者やその家族とかかわるナースは、介護者がどのようなことを負担に感じているのかを話す機会も大切にし、できるだけ負担なく療養生活を続けていけるようサポートすることを心掛けたい。
詳しくは、下記の大阪大学Webサイト参照
「在宅がん患者の介護者は、時間的要因を最も負担に感じている」
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20211006_1
(元文献:Naoko O, Ryohei Y, Yukihiro S, et al.: Care needs level in long-term care insurance system and family caregivers’ self-perceived time-dependent burden in patients with home palliative care for cancer: a cross-sectional study. Supportive Care in Cancer 2021. DOI https://doi.org/10.1007/s00520-021-06579-x)
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