2021/12/7
「腸脳連関」という言葉をご存知だろうか。これは、脳と腸が自律神経やホルモンを介して密接につながっており、互いに影響を及ぼし合うことを示した言葉である。ストレスや緊張を感じると胃腸の調子が悪くなる、あるいは胃腸の不調・病原菌が抑うつや不安をもたらすという相互関係が有名であろう。近年ではさらに研究が進み、腸内細菌叢も脳の機能に影響を及ぼすことがわかってきた。
腸内細菌と認知症との関係を研究してきた国立長寿医療研究センター「もの忘れセンター」の佐治直樹副センター長らの研究チームは、このたび、日本食の食事パターン(日本食スコア)が、腸内細菌の代謝産物濃度や認知症と関連することを発見した。
同研究チームは、国立長寿医療研究センター「もの忘れ外来」を受診した人を対象に便検査・血液検査、認知機能検査や食品摂取アンケートなどを実施した。日本食スコアは、食品摂取アンケートから算出された。
研究の結果、認知症でない人は、認知症の人よりも日本食スコアが高く、魚介類、きのこ、大豆類、コーヒーを多く摂取していたとのこと。また、これらの食品を多く摂取していると、腸内細菌の代謝産物濃度が低い傾向にあったという。具体的には、きのこやコーヒーを多く摂取している人では、P-クレゾールやインドールと呼ばれる腸内腐敗発酵産物の一種で、免疫毒性を有するとされる物質の濃度が低い傾向にあった。さらに、日本食スコアが高いことと認知症がないことが強く関連しているというデータが得られた。
同研究チームによると、これまで日本食と腸内細菌や認知機能の関連を示すデータはなく、「食事-腸内細菌-認知機能」(腸脳連関)の機序の解明は、認知症の新規予防法の糸口になるかもしれないと期待を寄せている。
詳しくは、国立長寿医療研究センターのホームページ、「もの忘れセンターの佐治直樹副センター長らが、日本食スコアと認知症、腸内細菌との関連を見出しました」(2021年11月4日付)を参照。
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