2022/1/11
新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器内科学分野の藤木伸也専任助教、猪又孝元教授らの研究グループが、日本で初めて高齢心不全患者における介護発生率(=新規介護保険申請率)を調査した。その結果、心不全患者の介護発生率は、年間で地域在住高齢者(一般人口)の2倍以上であることが示された。
本研究の対象は、2011年1月から2016年12月の間に、新潟市内の総合病院7施設(新潟大学医歯学総合病院、新潟市民病院、新潟県立がんセンター新潟病院、新潟南病院、新潟万代病院、桑名病院、聖園病院)で心臓エコー検査を行い、左室駆出率(※)が50%以下と診断された、65歳以上の高齢心不全患者で介護保険未申請の1,852例である。一般人口は、新潟市役所に保管されている介護保険のデータから抽出された、同時期の、新潟市内在住の65歳以上の高齢者、113,038例である。
解析の結果、平均観察期間1.7年において、介護保険の申請を行った心不全患者は332例、100人年あたりの介護発生率で見ると10.7であった。一般人口の介護発生率の4.0に対し、要介護に至る割合が2倍以上という大きな差が示された。
加えて、多変量解析では、介護発生のリスク因子として、心房細動、脳卒中の既往、骨粗鬆症などの併存疾患、認知症、また睡眠薬や利尿薬などの薬剤の使用が抽出された。
同研究グループによると、高齢心不全患者にとって一次予防、二次予防とともに介護予防も重要であることが判明したとし、「そのリスクを正確に把握し、通常治療からその後のリハビリテーションに至るまで、網羅的かつ全人的な医療を提供できる体制を整え、健康寿命の延伸につなげたい」としている。
詳しくは、下記の新潟大学Webサイト参照
「心不全患者における介護発生率を明らかに-年間の新規介護保険申請は一般人口の2倍以上-」
https://www.niigata-u.ac.jp/news/2021/96745/
※左室駆出率(LVEF)とは、心臓の機能を評価するための指標の1つで、一回の心拍で左心室が全身へと放出する血液量の割合を示したものである。この割合が50%以下になると、左室収縮不全とされる。
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