2022/4/5
2020年の人口動態統計(厚生労働省)によれば、日本における死因の第5位が肺炎、第6位が誤嚥性肺炎となっており、合わせて死亡総数の1割弱となっている。高齢になるほど肺炎による死亡リスクは上がり、特に認知症高齢者の主な死因として知られている。
肺炎の合併による死亡は、いわゆる老衰と比較して呼吸困難や不快感などの苦痛が大きく、集中的な緩和ケアの提供が必要となる。認知症末期においては患者本人の意思決定が困難であり、エビデンスに基づいた診療と緩和ケアの指針の作成が求められてきた。さらに、地域包括ケアの推進に伴い、在宅や施設が看取りの場となることも増えてきており、これら「暮らしの場」における緩和ケアアプローチの定着も、高齢者医療の最優先課題の一つとなっている。
このような背景を受けて、国立長寿医療センターは、「在宅における末期認知症の肺炎の診療と緩和ケアの指針」を発表し、2022年2月21日から3月6日にかけてパブリックコメントの募集を行った。このなかでは、在宅や施設などの「暮らしの場」における末期認知症高齢者の肺炎診療のあり方、意思決定のための予後予測、肺炎発症時の抗菌薬や輸液、オピオイドの使用、気道クリアランス法(排痰法)など、治療とケアの方法に関する診療と緩和ケアの指針が示されている。
本指針における「末期認知症」は、FAST(認知症の重症度分類)で「高度のアルツハイマー型認知症 日常生活でも常に介助」の状態になっており、①誤嚥性肺炎、②尿路感染症、③敗血症、④悪化傾向にある多発性のIII~IV度の褥瘡、⑤抗菌薬投与後の繰り返す発熱、⑥6ヵ月以内の10%以上の体重減少のいずれかを満たす状態としている。
肺炎のスクリーニングに活用できるMcGeer Criteriaや、呼吸困難評価に活用できるRDOS日本語版など、アセスメントに有用なスクリーニングツールが紹介されているほか、患者状態に応じた具体的な気道クリアランス法(排痰法)が紹介されており、看護・介護職も理解しておきたい内容となっている。
詳しくは、国立長寿医療研究センターWebサイト(「在宅における末期認知症の肺炎の診療と緩和ケアの指針」パブリックコメントのお願い)参照
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